いつもと変わらない日常が、一瞬にして過酷な状況に変わってしまう。激変したつらい環境の中で、子どもたち はどのようにして、主体的に「自分の生き方」を見つけていくのでしょうか。

一見ハードに思える局面を取り上げた物語の中に、一筋の光が見えることがあります。今回はそうした部分に焦点を当てたいと思います。

まず、低学年向けには『リンゴの丘のベッツィー』。赤ちゃのときに両親を亡くし、大叔母にかわいがられて育ったベッツィー。その大叔母も亡くなり、親戚の農場へ行くことに。泣き虫で人を頼ってばかりいたベッツィーはここで伸びやかに成長していきます。

『ラモーナとおとうさん』では、お父さんが失業し、家族間に亀裂が生じますが、最終的には新しい家族の関係ができあがっていく過程が描かれています。『日ざかり村に戦争がくる』は、のどかなスペインの山村に戦争の足音が着実に近づいてきて、村の生活が変わっていく様子を、少年の目を通して淡々と描いた物語です。

また、日常と異なる世界を知るという意味では、外科医であり冒険家でもある筆者の目を通じて、南米ペルーの山奥にある村・ケロに暮らす人々の姿を描いた『地球ものがたり インカの村に生きる』(関野吉晴著/ほるぷ出版)もおすすめしたい一冊です。

続いて高学年には『真夜中の動物園』を。第二次世界大戦中、家族を目の前で殺され、逃げ惑う幼いジプシーの3兄弟がたどり着いた動物園。死を目前に、動物と3兄弟の間に生まれた交流とは?『ライオンとであった少女』は数奇な運命をたどり、人間関係 に絶望しているアベラ、そして母親との関係から怒りや孤独を抱えるローザ。そんな二人の少女がイギリスで出会い……。『路上のストライカー』は過酷な状況下、南アフリカでストリートチルドレンになった少年・デオが、人生をサッカーにかけて心を立て直してい くという物語です。

タフという意味では受験勉強にいそしむ子どもたちも、ある種そうした環境にあるかもしれません。ときには本の世界で一息つきながら、現実世界をしなやかに生きていってほしいと思っています。これらの本が、自分自身を見つめ直す良い機会になってくれればうれしいですね。

『リンゴの丘のベッツィー』

ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー【著】、多賀京子【訳】、佐竹美保【絵】
08年刊/徳間書店/ 1,600円+税
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泣き虫で頼りなかった
少女の成長物語

両親と死別し、育ての親である大叔母も亡くなり、遠い田舎の農場に預けられた9歳のベッツィ-。豊かな自然の中、厳しくも温かい家族に見守られ、伸びやかに成長する少女の姿を描いています。アメリカ児童文学の名作古典の一つ。

『ラモーナとおとうさん』

ベバリィ・クリアリー【著】、松岡享子【訳】、アラン・ティーグリーン【絵】
01年刊/学習研究社/ 1,200円+税
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お父さんが仕事をクビに……。家族に亀裂が生まれますが、やがて新たな関係性が育まれていきます。

『日ざかり村に戦争がくる』

フアン・ファリアス【著】、宇野和美【訳】、堀越千秋【絵】

13年刊/福音館書店/ 1,200円+税
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少年の目を通し、いつのまにか忍び寄る戦争の恐ろしさを静かなタッチで描いた物語。

『真夜中の動物園』

ソーニャ・ハートネット【著】、野沢佳織【訳】

12年刊/主婦の友社/ 1,500円+税
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死にゆく運命の兄弟と
動物たちが見たものとは

第二次世界大戦中のチェコスロバキア。ナチスの侵攻で目の前で家族を殺されたアンドレイ、トマス、赤ん坊のウィルマ。幼い3兄弟がたどり着いたのは、廃墟と化した動物園でした。人間とは、戦争とは──。珠玉のメッセージが心に突き刺さります。

『ライオンとであった少女』

バーリー・ドハーティ【著】、斎藤倫子【訳】
10年刊/主婦の友社/ 1,600円+税
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今、イギリスで最も力量があるとされる作家が描いた、二人の少女の傷ついた魂の物語。

『路上のストライカー』

マイケル・ウィリアムズ【著】、さくまゆみこ【訳】
13年刊/岩波書店/ 1,700円+税
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ストリートチルドレンのデオは、サッカーに出会い、心を立て直して生きることを選びます。

『ユタ日報のおばあちゃん 寺澤
国子(海を渡った日本人・第2巻)』


上坂冬子【著】、加古里子【絵】
04年刊/瑞雲舎/ 1,500円+税
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戦時中にアメリカで
日本語新聞を発行し続ける

1922年に渡米するも夫が急死。夫の後を継ぎ、戦争中もアメリカで日本語新聞『ユタ日報』を発行し続けた寺澤国子の生涯を描く。

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