石原孟先生の研究テーマは風力発電。それも、陸上より強い風が頻繁に吹く海の上での発電です。目標は、たくさんの風車を洋上に浮かべて発電し、日本で必要な電力を風力だけですべてまかなうこと。

「すでに、千葉県の銚子と北九州の海で、3基ずつ風車を稼働させることに成功しています。今は、福島県沖で3基の風車を1つのユニットとしてまとめて運用することに挑戦しているところです。これがうまくいったら、ユニ石ットを徐々に増やして、最終的には140基もの風車が立ち並ぶ、大規模な発電施設の建設を目指しています」

現在、福島県沖で稼働している風車1基は、水面からの高さが約106m、羽の直径が約80m。これだけ大きなものを海に浮かべて、発電や送電ができるようにするのは技術的に困難も多く、今まで洋上発電が一般的でなかったのはそのためです。たとえば、台風の激しい風や大きな波にも耐えられるように、風力や波の強さをコンピュータで計算して分析し、衝撃に強い風車をつくるのですが、ただ強くすることだけを考えると重くなって風車が浮かなくなる、材料もたくさん必要になるので費用がかかるなどの問題が生じます。

「このプロジェクトの風車は、回転する羽の部分は航空工学、羽を支える柱の部分は建築工学、風車を洋上で浮かせる浮体という部分が船舶工学、浮体を固定する海中のアンカー(錨)部分が土木工学と、異なる専門分野のスキルをまとめてつくりあげるもので、そこに難しさがあります。たとえば、理想的な羽を追求すると浮体に負担がかかってしまう場合があり、羽の専門家と浮体の専門家の意見が対立することも珍しくありません」

石原先生は、大学で航空工学を、大学院で河川や海に関連した土木工学を、そして建設会社で建築を研究するなど、さまざまな分野に精通しています。「そのため、専門家同士の意見が対立したときに仲裁に入ることも、私の役割の一つです(笑)」

海で発電した電力は、電力を消費する陸上まで運ばなくてはなりません。「電力は海中ケーブルで送電します。このケーブルの作製も課題の一つで、波の強さや向き、送電効率、メンテナンスのやりやすさなど、さまざまな要素を考慮して最適な形を設計します」 また、風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーには、安定供給という問題もつきまといます。

「解決策としては、規模を大きくすることです。日本の洋上風力発電の利用可能なエネルギー量は、約16億kWという試算が出ています。風は常に同じ場所に同じ量で吹くわけではありませんが、日本全国にたくさん風力発電設備をつくれば、たとえば東京で風が吹いていない時間でも、その分、ほかの 地域で風が吹いていれば、発電できる総量は変わらないわけです。そうすれば、安定的に電気を供給できます」

福島県沖に発電設備をつくる際には、地元民の説得にも当たりました。

「最初は、〝漁ができなくなる!〞と話も聞いてくれませんでした。多いときで週に3回と、何度も足を運び、相手の立場を考えて話をすることで、徐々に打ち解けました。浮体の海中部分に魚を集める装置をつけたり、ビデオをつけて魚の様子がわかるようにしたり、と漁師さんたちにも利益となるように工夫をする予定です。また、風車の建設となると、資材の運搬や工事などで経済的な活性化も見込めますから、このプロジェクトが福島県の震災復興の一助になればと考えています」

石原研究室での学生の研究テーマは「洋上風力発電のコスト削減」「風車を自動的にメンテナンスするシステム」など風車周辺のほか、「竜巻が建物に作用する力」「鉄道の振動」など、橋や送電線の揺れといったインフラ関連のものになります。

「たとえば、自分のつくった風車が設計ミスで倒壊した場合、100億円規模のお金を無駄にすることになります。このようにプレッシャーの大きい世界ですが、学生にはそれに負けず、誰も成し遂げていないことに挑戦する強い気持ちを持ってほしいと思います」



東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻
石原孟研究室
石原 孟先生
石原 孟 先生

東京工業大学大学院博士課程修了後、清水建設(株)技術研究所、東京大学大学院助教授などを経て現職。日本風力エネルギー学会会長なども歴任している。

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