岩竹徹先生の研究テーマはコンピュータで音をつくり出すことです。「音と言うものが空気の振動であることは、理科の授業などで習ったと思います。私は振動を偏微分方程式と言う数式で数学的に数値化してプログラムを組み、音をつくっています」

もともと岩竹先生は、作曲家として複雑な響きを持ったオーケストラ作品などをつくっていました。「やがてオーケストラの楽器の音だけでは飽き足らなくなり、楽器以外の音を曲に使いたくなって……。自分の求める音をコンピュータでつくり出そうと考え、アメリカに行き、コンピュータ音楽の研究をしました。当時、コンピュータは貴重なもので、コンピュータ音楽を学べるところは世界でも限られていたんです。お寺の鐘の音を再現したり、それまで世界に存在していなかった音などもつくりました」

コンピュータで音をつくることで、音楽の世界には新しいステージが訪れと言います。「大がかりなコンサート会場や楽器、演奏者が不要になるので、いつでもどこでも音楽を発信できるようになります。たとえば、街を歩いていると突然風鈴の音が鳴り出す、というような仕掛けをつくることも可能です」

音楽と言えば、「演奏者や音楽再生機器が一方的に聴き手に発するもの」というイメージがありますが、聴く側も自らアクションを起こして楽しめるようなものも研究中だそうです。「センサで人の動きを感知して、コンピュータで音を出すシステムなども研究しています。聴き手が手を動かしたり、目を向けたりするのに反応して、音が出たり光が瞬いたりする一種のエンターテインメントですね。いつでもどこでも音楽を聴くことができて、聴く側も音楽に影響を与えられる、リアルタイムで双方向的な音楽環境の整備が研究目標です」

学部生は、初めのうちはクラシック音楽の作曲法や和音などに関する基礎的な音楽理論について学びます。大学院生を中心とした「サイバーサウンド」のゼミでは、学生一人ひとりがクリエイターとなり、音楽を用いた作品づくりに取り組みます。

学生の研究テーマは「人工的に無音状態をつくり出し、人々に経験してもらう」「脳波計で脳波を計測し、その波に対応した音楽をつくる」「煙のゆらぎを数値化し、それに対応した音をつくる」など、さまざまです。「研究は、学生各自で進めますが、一人で研究を続けているとアイデアに限界があります。そのため、週1回の授業で、進捗状況を発表し、学生同士が意見を交わす場を設定。大学院生が進行をリードしていますが、学部生もそれに臆さず自由に発言しています」

授業では、たとえば先ほどあげた脳波や煙に合わせて音楽をつくる、といった研究に対し、「どんな脳波計を使うのですか?可能なら私にも貸してください」「煙の解析はどんな方法でやるのですか?」「似たようなことを研究している先輩がいるので、アドバイスをもらってみては」……など、活発な意見のやりとりがされていました。

「学生には、最低でも春・夏・秋・冬の年4回、テーマとする地域へ実際に行くことを義務づけています。特に東北の場合は、過酷な冬の姿を見ずにすべてを知ったつもりになってもらっては困りますからね」

つくった音楽をどう社会に役立てるかを考えることも大きなテーマだと言います。「今までにない音楽を、まず"つくりたい"という欲求だけでつくるのも良いと思いますが、それによって世の中に貢献することができればすばらしいですね。たとえば、広告代理店へ就職した卒業生がいますが、街の空間で音や光をリアルタイムに用いた、今までにない広告をつくるといったことが考えられます。音楽関連のおもしろいアプリケーションを開発し、新たなビジネスをつくることもできるでしょう」



慶應義塾大学 環境情報学部
岩竹徹研究室
岩竹 徹教授
岩竹 徹 教授

慶應義塾大学工学部卒業、イリノイ大学音楽学部修士課程、ハーバード大学音楽学部博士課程修了。欧米各国などでコンピュータ音楽の作品を発表している。

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