経済や行政、環境、人々の幸福感など、さまざまな要素を総合的に判断し、いかに良い社会をつくっていくかを考えるのが社会デザイン論の分野。早田宰先生は自身の研究について語ります。「研究対象は多岐にわたりますが、今は、人口減や経済の衰退に苦しむ地方の町、居住者が高齢化し建物も老朽化した団地、自然災害で大きな被害を受けた被災地など、活力を失っている"条件不利地域"と呼ばれるところをメインに研究しています」

早田先生は1995年に阪神淡路大震災が発生したとき、現地を訪れ、町の復興を支援しました。東日本大震災発生後も、学生と共に被災地の気仙沼市や田野畑村に足を運んでいます。「災害後はどうしても個人の生活再建や都市計画などが優先されてしまいます。しかし、人とのつながりや、自分の役割、生きがいなどがあることで人は活力を取り戻します。そうしたものを生み出す、『社会システム』を再生させることが重要なのです。学生の取り組みとしては"気仙沼復興塾"があげられます」

気仙沼復興塾は学部問わず集められた学生により結成された組織です。 「学生食堂と共同して特別メニューの"気仙沼かつおの塩辛クリームパスタ"を開発・販売したり、気仙沼市を訪れる観光客と現地の人々が語り合う会を開催して新たな観光資源にしたりと、多様なプロジェクトが進められました。以上のような活動を通じて、気仙沼市の様子を東京の人に知ってもらうことも大事です」

各プロジェクトは、学生たちが5人ほどのグループをつくって進めていきます。

「まず、プロジェクトの遂行にあたって何が問題なのか、チャート図を作成します。たとえば先ほどのクリームパスタの件では、かつおを加工・調理するコストが高いことや、食堂では生の刺身を提供できないことなどが課題でした。そこで、気仙沼ですでに加工され市販されているビン詰めの塩辛に注目し、学生自らいろいろなメニューを試作して、塩辛に合うホワイトソースという食材にたどり着いたわけです」

問題の発見・解決のためには、現地の人々とよく話し合うことも大切です。

「学生には、最低でも春・夏・秋・冬の年4回、テーマとする地域へ実際に行くことを義務づけています。特に東北の場合は、過酷な冬の姿を見ずにすべてを知ったつもりになってもらっては困りますからね」

学生は、最初はいずれかのプロジェクトに一員として参加しますが、徐々に一人でプロジェクトを立案・実行する力を身につけていきます。

「首都圏出身の学生も多いですから、地方の町の漁師や農家の人々の話を聞くことも勉強になるでしょう。そうした人の実情を理解することは、将来、商社の社員や公務員として地方の人々と関わったり、地域社会でリーダー的な役割を果たすことが期待される学生にとっても役立つと思います」

過去の学生の研究テーマについても聞いてみました。

「今回は被災地の話が多くなりましたが、まちづくりに関することであればテーマは自由。新宿区をいくつかの区域に分け、居住人口や会社の数、労働人口どを調べて地域の特性を解明した学生がいましたが、なかなかレベルが高く、のちに30代の若さで教授になりました。また、東京の奥多摩地区で交通が不便なあまりに廃村になった集落に、最後まで一人で住み続けた人物を追った学生の研究も印象に残っています。日本各地の自治体の条例づくりに関する研究や、海外に目を向けフィリピンの貧困対策などを調査したケースも」

今後のまちづくりにおいてはスローシティという概念も重要と言います。

「経済効率優先のまちづくりではなく、地域の特性・特産、持続可能性などを重視し、市民が積極的に参加してまちづくりを行うという考え方です。たとえば港町なら、そこで働く漁師が音頭をとって、町の象徴である港自体をテーマパークにして観光の目玉にするなど、アイデア次第で可能性は無限です」



早稲田大学 社会科学総合学術院
早田宰研究室
早田 宰教授
早田 宰 教授

早稲田大学大学院理工学研究科修了。文系・理系両方の視点からまちづくりを研究。川口市協働推進委員会委員長など、多数のまちづくりの組織にも在籍する。工学博士。

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