右:『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』チャールズ・ユウ【著】、円城塔【訳】/ 14年6月刊/早川書房/ 1,600円+  税 Amazonで購入
左:『ミドリのミ』吉川トリコ【著】/ 14年6月刊/講談社/ 1,500円+税 Amazonで購入

アメリカの新鋭、チャールズ・ユウの『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』は、風変わりな家族小説です。訳者は芥川賞作家の円城塔。語り手の「僕」は、タイムマシンの修理技術者です。電話ボックスよりも少し大きいくらいの箱の中で暮らしています。母は介護施設に入っていて、父は行方不明。つまり、家族はいるけれどずっと不在なのです。友だちは自己評価の低い人工知能タミーと、ペット兼暖房器具がわりのエドだけ。あるとき、「僕」はタイムマシンから降りてきた未来の自分を光線銃で撃ってしまいます。そのためにタイムループに閉じ込められるのですが……。

未来を失った「僕」は、自らの過去を旅します。その中で重要になるのが失踪した父の記憶です。ガレージでタイムマシンの夢について熱く語る父。父の話を聞いてもこれっぽちも興奮できず〈うちって貧乏なの?〉と返してしまう「僕」。大人になりきれない親と、成長して世界を広げつつある子どものすれ違いが、切なくもユーモラスな筆致で描かれています。親子が一緒にいられる時間は限られていて、過ぎ去ったことは取り戻せません。読み終えたら、きっと「今」を最大限に楽しみたくなることでしょう。

もう一冊のおすすめは、吉川トリコの『ミドリのミ』。小学3年生の重田ミドリとその父・広が、小さな町で写真館を営む源三の家に転がり込むところから物語は始まります。源三は広の恋人。なぜ娘を連れて家を出たかというと、ミドリの母の貴美子は大手商社に勤める多忙なエリートで、ほとんど残業のない広が育児を担当していたから。「こうあるべき」とされる形からはみ出してしまった家族が直面する問題とは? 章ごとに視点人物を切り替えながら多角的に描いていきます。

両親の離婚について心配しながら口に出せないミドリ、ミドリを愛しているけれど〈自分の人生を生きたいと願うのは悪いことなんだろうか〉と悩む広、娘に対してこれだけはすまいと誓ったことを気がつくとしている貴美子、ゲイであることを公言している源三、彼らと接することで偏見や差別をあらわにしてしまう人々。みんな存在感があります。シビアな現実から目をそらさず、カラフルな生き方を肯定し、同調圧力から逃れたい人の背中を優しく押してくれる一冊です。




『バタをひとさじ、玉子を3コ』
石井好子【著】
14年6月刊/河出書房新社/ 630円+税
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義父に頼まれてつくったかつお節入りオムレツ、夏のおもてなしにぴったりのゼリーよせ、パリで食べた「なすのキャビア」……。『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』で知られるシャンソン歌手の料理エッセイ。





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