「あらゆる人が自然と生命の関係について考えるきっかけをつくりたい」

鈴木あやの氏 (ドルフィンスイマー・写真家・水中モデル)夢をかなえるために大事なこと3つ

自然に囲まれて動植物に興味を覚える

鈴木あやの
東京生まれ。桜蔭中学校・高等学校。東京大学農学部卒業。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。大手企業に研究職として入社。小笠原諸島で野生のイルカに出会ったことで、撮影活動を開始。イルカの生態やサイエンスのおもしろさを伝えている。

東京生まれですが、比較的緑が多く残っているところで育ちました。そのため、小さい頃から植物や昆虫と戯れるようにして過ごしていました。ボウフラやオタマジャクシを採ってきて、大きくなるまで毎日観察していたこともありました。

小学1年生のときに親の転勤で、オーストリアの首都ウィーンの郊外へ移住しました。そこには日本とは比べものにならないほど豊かな自然があり、大きな森や池を遊び場にして暮 らしました。日本人学校に入りましたが、宿題が出されることはなく、学校から帰ったら思いのままに木登りをしたり、水辺で遊んだり。家では工作をして遊んだり絵日記や詩を書いて過ごしていたのを思い出します。

学校が休みになると、両親がイタリアをはじめとするヨーロッパ各地へ旅行に連れて行ってくれました。美術館へ足を運んだり、オペラを鑑賞する機会も多かったです。

4年生のときに帰国して地元の小学校に通うようになりました。ただ、一組の人数が多く、大勢の生徒を平均化しようとする授業で、海外での学校生活とはあまりに違いました。帰国 してすぐに通い始めた学習塾はとても楽しく、友だちと一緒になって競争しながら学ぶ楽しさや、問題が解けるおもしろさというものも教えてもらいました。特に算数は、解き方をひらめいた瞬間が本当にうれしく、どんどん好きになりました。

創作ダンスに熱中した桜蔭での6年間

桜蔭ではダンス部に所属し、6年間活動する。写真は中3の文化祭。写真中央・左が鈴木氏。

わたしには1歳上の姉がいて、昔から憧れの存在でした。姉が桜蔭中学校に進学したので、私もあとを追うようにして中学受験をして桜蔭へ。入学後はダンス部に入部しました。この部活動は、中高6年間の中で何よりも楽しいものでした。テーマや構成、曲の選定から振りつけ、衣装にいたるまで、すべて自分たちの手で一から行う。それが、創作ダンスのおもしろさです。仲間と力を合わせて舞台作品をつくりあげる楽しさと充実感を味わいながら、文化祭やコンクール出場を経験しました。その一方で、生徒一人ひとりが勉強にも一生懸命取り組むのが、桜蔭の特徴です。休み時間にも熱心に勉強する生徒がいるのが自然な環境でした。私も周りから刺激を受け、友達と切磋琢磨しながら勉強をしていました。

大学受験に際しては、友人のほとんどが受験する東京大学を目指すことに。姉も東大に進学しましたし、それが当然なことだと考えていました。「両親の期待に応えなくてはいけない」という気持ちもありました。

ところが、そんな曖昧な気持ちで受験したせいか、いざ東大に入学すると、自分が何のためにここへ来たのか分からなくなってしまいました。それでも、「せっかく東大に入ったのだから何かを学ぼう」と考え、そこで思い出したのが、子どもの頃に科学雑誌を読んでやってみたいと思っていた遺伝子やバイオの研究です。そして、農学部を選択し、遺伝子を扱う研究室に入りました。

生物の遺伝子を解析し操作することで、世の中で役に立つ薬や化合物を微生物に大量に作らせることができます。この研究により、わたしたちの生活をより豊かにより良いものに変えることができる。そんな夢を実現させたいという気持ちが強くなり、研究にも自然と熱が入りました。大学卒業後も大学院に進み、研究室で過ごす生活を続けました。

自分らしい仕事が見つからず悩んだ日々

東京大学では農学部を選び、遺伝子を扱う研究室に進む。毎日、実験に明け暮れた(写真中央が鈴木氏)。

大学院の修士課程を終えた後、博士課程へ進むかどうかで悩みましたが、専門的に学んだことをより早く社会に生かすために就職の道を選択。しかし、企業での研究職というものを私は理解していませんでした。企業は世の中に役立つ製品やサービスを提供し、その対価を得る。特許を取り、利潤を追求するための研究。

研究職を続けるうちに、「仕事とは一体何なのだろう」と考えるようになりました。サイエンスは大好きであり、生命の意義を説き明かすような研究をしたい。でも、仕事として研 究を行うのは何か違う。悩んだ末に、研究職から、もっと身近な製品に関われる商品開発の仕事へと転職しましたが、苦しい気持ちは変わらないまま……。

自分は一体何がしたいのだろうか。

答えを求めて、さまざまな業種の人が集まる異業種交流会という集まりに参加したり、いろいろな世界に触れ、学ぼうと努力しました。自らの夢のために独力で起業した人や夢溢れ自分の道を進む人に出会い、自分らしいやりたいことを見つけられずにいる自分との違いに落ち込むこともありました。

イルカとの出会いが人生の転機に!

2013年7月に発売された写真集『イルカと泳ぐ』(新潮社)。野生のイルカと泳ぐ様子、至近距離で撮影したイルカの瞳や表情、野生ならではのイルカの姿や生態行動などが掲載されている。

--会社を辞めようか。

そんな思いを抱きながら、以前からずっと訪れてみたかった小笠原諸島へ一人旅に行ったのが2007年の頃。そこでの体験が、人生の転機となります。

今は世界自然遺産にもなっている小笠原諸島には固有の生物種がたくさん存在し、驚愕の大自然がそこにはありました。そして出会った野生のイルカ。小笠原の碧い海で初めて泳いだ私に、ピーピーという高い鳴き声を発しながら、イルカたちが寄ってきたのです。私は一瞬で、この愛らしい生き物の虜になりました。

それからは、イルカと泳ぐために、素潜りを覚えるところからチャレンジ。感動と好奇心から始まった行動が、やがては生態観察となり、独学で撮影技術も身につけました。

野生のイルカと共に泳ぐ感動を伝つたえたい!

野生の動物であるイルカと人間が、心通わせ共に泳ぐことができる。この感動をどうやったら伝えられるだろうか。

そうして考えたアイデアが、①水中モデルとしてイルカと目を合わせ泳ぐ様子、②泳いでいる時に実際に見えているイルカの瞳や表情を写真家として撮影。この二つの視点を組み合わせるという新しい表現方法です。これらに加え、野生のイルカのおもしろい生態行動や、野生ならではの姿を写真展や写真集『イルカと泳ぐ』としても発表しています。子育てをする親子イルカ、傷だらけのイルカなども。ドルフィンスイマーとしての活動をタートした当初は、この活動をどう展開していくのか、明確なイメージを持っていたわけではありません。でも、私なりに続けていこうと決心したのです。

自分自身が本当にやりたいと思ったことを見つけられたよろこびは、それまで一度も経験したことのない感情でした。野生のイルカは、泳ぐたびに新しい発見があり、好奇心は膨らむばかりです。地球の7割を占める海には未知の魅力が溢れています。海、陸、地球、宇宙、あらゆる生命が深く関わり合い、その中で私達は生きています。私が発信する写真や映像が、あらゆる人が自然と生命の関係について考えるきっかけになることを願っています。

ウィーンで生活していた頃、いろいろな国へ旅行したり、たくさんの美術館やオペラを見に連れて行ってもらったのが、子ども時代の印象深い思い出です。大自然と芸術に親しんだ経験が、今の自分が行っている活動の土台となっているように思います。帰国後も、私の性格に合う塾を見つけてくれたのは両親でした。進路のことで意見が衝突した時期もありましたが、今振り返ると「両親は私のためを思って言ってくれていたんだ」と心から感謝できるようになりました。
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