日本古来の伝統文化を体験できる楽しさ

毎週木曜日。校舎にある和室で、生田流の演奏家である衣笠一代コーチの指導のもと、部員たちは琴の練習に打ち込みます。どの表情も真剣そのもの。室内には、琴独特の美しく透き通るような音色が響きます。

練習の合間は、一転して和やかな雰囲気となり、上下関係なく打ち解けるのが箏曲部の魅力。「見学に来たときに目にした先輩方の姿に惹かれて入部しました。日常生活ではあまり見かけることのない楽器だけに、弾けるだけでかっこいいなと思いました」と話してくれたのは、今年の3月まで部長を務めていた斉藤美樹さんです。

唯一の男子部員、瀧平士夫くんは和太鼓演奏の経験者で、「琴の演奏を通じて、和太鼓の良さがさらに見えてくるのではないかと思い、入部しました」と語ります。瀧平くんが受け持つのは、普通の琴よりも少し大きく弦の数も多い「十七弦」という楽器。洋楽で言えば、ベースの役割を果たすパートです。「和太鼓をやっているだけに、リズム感がいいですね」と、コーチの衣笠コーチも期待を寄せています。

日本古来の伝統文化を学ぶ経験を自らの将来に役立てたいと考えている部員もいます。

「私は将来、小学校の先生になりたい。教師として子どもたちにいろいろなことを教えられるよう、幅広い経験を積みたいと考えています。箏曲もその一つです。それに、琴を習い始めたと言ったら、祖父がとても喜んでくれました」(田中友絵さん)

「社会に出たら、海外で働くことが私の夢。日本の伝統文化に触れる体験は、日本人としてのアイデンティティーを実感することにつながります。箏曲部での活動は、卒業後もきっと役に立つと信じています」(木村百合さん)

それぞれの思いを胸に活動に取り組む部員たち。顧問の橋本都美子先生は、各自の成長をずっと見守ってきました。「琴の合奏に指揮者はいません。ですから、全員で呼吸を合わせるのがとても大事。一人だけうまくても、きれいな音色にはならない。お互いを思いやりながら練習に打ち込むことで自然と協調性や責任感を育んでいくのです」

文化祭では浴衣を着て演奏を披露するのが伝統。「帯の締め方などを勉強することができ、引き締まった気持ちで演奏に臨めるところがいいですね」(泉樹理さん)

演奏に使う「爪」と、それを入れる「爪箱」は、各自で用意する。どの部員も、好みの爪箱を選ぶのを楽しんでいる。中には、コインケースを爪箱代わりにしている人も。

「琴になじみがない人は多いと思いますが、一度弾いてみるとおもしろさがわかります。もっともっとたくさんの人に琴の魅力を知ってもらいたいです」(鶴見夏実さん)

取材・文/堀雅俊 写真/東京フォト工芸(桑原克典)

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