工学とは、主に機械やロボットなどのものづくりを行う研究分野。それを医療分野に役立てるのが、医療工学という学問領域です。

現代では、人工心臓やレーザーメスなど、最先端の科学技術が医療に生かされていますが、それは医療工学の成果とも言えます。

三林浩二先生も、この分野で多くの研究成果を残し、自らの専門分野を「センサ医工学」と命名。主に病気を早期発見するセンサを手がけており、最近では糖尿病を感知できるコンタクトレンズを開発しています。

「糖尿病は、血糖値という血液中のブドウ糖の濃度を測って病状を調べる方法が一般的です。しかし、人間の涙にも血液の10分の1ぐらいの濃さのブドウ糖が含まれています。私はその点に注目し、ソフトコンタクトレンズに似た素材にブドウ糖を計測するセンサをつけ、日常的に血糖値を測定することができる機械をつくろうと考えました」

現在は、ウサギの目にレンズをつけ、実験を行っています。動物実験により研究成果を実証することができれば、実用化に近づきます。

「糖尿病やガンなどの病気は、病院に行って長時間かけて何種類もの検査をしなければ、発見することができません。また、病気が見つかったときには、もう手遅れで治療ができないケースも多い。そんな問題を解決するには、医療の知識が乏しい人でも簡単に使える機械を開発しなくてはいけません。さらに、世の中に普及させるには、お金のかからない製品にすることも課題と言えるでしょう」

三林先生の研究室では、このほかにもさまざまな研究を行っており、その一つが臭いのセンサです。

「内臓の病気は発見しにくいものが多いのですが、ガン細胞には臭いがあるなど、病気別に固有の臭いを持っています。そのため、ヒトの口臭や体臭を調べることで、その人がどんな病気にかかっているかがわかります」

呼吸時の息に含まれる病気特有の臭いを計測して、コンピュータ上で数値化して調査を進めます。

「実は、ヒトの肝臓は、臭いを感知することに長けた非常に優れたセンサです。肝臓の役割は、ヒトの体内に入った有害な物質を解毒することですが、臭いを含む害のあるものを判断しています」

三林先生は現在、肝臓の特性を利用したセンサの開発にもチャレンジしています。

「光ファイバの先に肝臓の酵素を取りつけ、それをコードでコンピュータとつなぎ、キャッチした臭いの成分から病気を見つける装置を考案しました。現段階では、お酒を飲んだ人の息を調べて、その人の血液中のアルコール濃度を瞬時に計測する機械をつくることにも成功しています」

病気の発見や体調の検査を手軽に行うために、さまざまなアプローチを行う三林先生。究極の目標は、「空港の荷物検査で使われているような、ある場所を通過するだけであらゆる病気を見つけられる装置を開発すること」と語ります。

「医療工学の世界では、人工心臓など体内に埋め込むタイプも多く開発されていますが、それを動かす動力をどう確保するかが、今後の大きな課題でしょう」

 研究室の学生の一人は、この問題を研究テーマにしています。

「血糖値が基準値をオーバーすると、血糖値を下げるインシュリンを自動的に発射する装置を開発しています。このほかにも、学生たちは幅広い研究に取り組んでいます」

世界に先駆けて高齢社会を迎える日本。医療に関するさまざまな問題が持ち上がっていますが、三林先生は「ネガティブに捉えないことが大切」と話します。

「高齢社会に対応した仕組みや技術をを生み出すことができれば、日本より後に高齢化を迎えるほかの国々に新しい技術を輸出することができる。日本が経済的に復活するチャンスになるのではないでしょうか」



東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
 三林浩二研究室
三林 浩二教授
三林 浩二 教授

東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。大手自動車部品メーカーなどを経て現職。東京医科歯科大学の学長特別補佐も務める。

一番星学園
高度な作品と堂々たる発表が最優秀賞受賞の決め手に
関数のグラフを使って絵を描く関数グラフアートの全国コンテストで、中学生ながら最優秀賞を獲得した河村進...>>続きを読む
気になる部活調査隊
ヨット帆走から自然の偉大さと命の大切さを学ぶ
逗子湾に面した逗子開成中学校・高等学校は、その環境を生かした「海洋教育」を重視。すべての生徒が在学中...>>続きを読む
サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。