「使いやすく役に立つロボットで、より良い社会に」

山崎文敬氏 (株式会社イクシスリサーチ代表取締役)夢をかなえるために大事なこと3つ

大自然とラジコンに親しんだ少年時代

山崎文敬
1973年山口県生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。科学技術振興事業団(現:科学技術振興機構)ERATO北野共生システムプロジェクトに参画後、イクシスリサーチを創業。点検や作業補助で活躍するロボットを多数開発する。

山口県の生まれですが、小学2年生のときに家族で沖縄へ引っ越しました。きれいな海と手つかずの自然が一面に広がる環境になって、毎日のように友だちと遊び回っていました。田んぼでサッカーをしたり、野山を駆け回ったり。週末のたびに、家族で海水浴や旅行に出かけるのも楽しかったですね。一応塾には通っていましたが、遊びの予定が入ると、そちらを優先して塾を休むことも(笑)。

山口県には5年生の頃に戻りました。沖縄ほど豊かな自然はないものの、庭に池や木がある家だったので、枝をのこぎりで切ったり、舟をつくって池で走らせたりして遊んでいました。

そして、当時、一番夢中になったのが、組み立て式のラジコンです。ラジコンブームに乗って、ほかの子たちと同じように遊び始めたのですが、私の場合、あまりにも夢中になり過ぎて……。1年ほど経ってブームが終わっても、飽きずに遊んでいました。

お小遣いを貯めては新しい部品を買ってタイヤを換えたり、サスペンション(緩衝装置)をいじったりして、ラジコンカーを改造するのが楽しくて仕方ありませんでした。私が今、ロボット開発の仕事に就いているのは、このときの経験があったからだと言えます。

中学と高校は地元の学校に進み、足が速かったので陸上部で6年間活動。中学のときには、周囲から推薦されて生徒会の副会長となり、校外の活動も経験しました。

当時を振り返ると、鳥人間コンテストやロボットコンテストの番組を必ず観ていたことも思い出されます。うちはあまりテレビを観る習慣のない家庭でしたが、それらの番組だけは不思議と家族揃って観ていたので、余計に印象に残っているのかもしれません。そこからも影響を受け、「ロボットをつくってみたい!」という気持ちがどんどん膨らんで、大学進学を考える時期には、迷わず工学系の学部を選びました。

世界大会出場の費用を捻出するために起業

2007年にラクダレース用のジョッキーロボット開発の話が上がり、中東のドバイへ行ったときの写真。

上京して早稲田大学に入学すると、早速おもしろそうなサークルを見つけました。迷路のように入り組んだ通路をセンサーと人工知能を使って効率的に進む「マイクロマウス」というロボットをつくって大会に出場するサークルです。このときもすぐに夢中になり、大学の講義は半分そっちのけでサークル活動に没頭。この活動をきっかけにして、大学1年次からさまざまな大会に参加しました。

その中でも、私の将来に最も大きな影響を与えたのが、3年生のときに創設された「ロボカップ」という大会です。発起人は、現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所で所長を務めている北野宏明さんで、「最先端の技術で競い合あう」という大会のテーマにすごく魅力を感じました。

私は北野さんと出会ったことで、ロボット研究にも参加させてもらえることに。「ピノ」というヒューマノイド(人型ロボット)の開発も任され、多くの経験を積むことができました。

しかし、それまでヒューマノイドをつくることなど一度もなかったので、最初は途方に暮れました。そのときに自分を助けてくれたのが、ラジコンで遊んでいた頃の知識です。「ピノ」を動かすために、ラジコンのモーターを組み合わせるなどの工夫をしながら、少しずつノウハウを学んでいきました。

大学院生になってからも、北野さんのもとへ通いながらロボットの大会に出場。ところが、さまざまな大会に参加して優勝も経験するようになると、困ったことが起きました。世界大会へ出場するための遠征費が足りないのです。最初のうちは、アルバイト代を注ぎ込んだり、親にお金を借りたりして何とかやりくりしていました。しかし、半月以上も海外に滞在することもあったため、高額な費用がかかります。

そのときに相談に乗ってくれたのも、北野さんです。当時、国内大会で優勝した私のもとには「ロボットを売ってくれないか」という依頼が来ており、それを聞いた北野さんが「会社をつくってロボット技術を売れば、旅費や開発費がつくれるじゃないか」とアドバイスしてくれたのです。助言を受けた私は、30分で起業を決断。その日の帰り道に本屋に寄って、会社のつくり方が書いてある本を買い込み、1週間後には会社を立ち上げました。

使い続けてもらえるロボットをつくりたい

高所点検用ロボット「ZIGZAGII」。最長12mまで伸びるアームを駆使して、高所での調査・点検を行う。

ロボット開発会社のリーダーとして仕事に取り組むようになってから、わかったことがあります。それは、実生活の中で役に立つロボットが、まだまだ少ないということです。

「ロボット」と聞くと、多くの人は人間とおしゃべりをしたり、すごいパワーを持ったヒューマノイドを想像するのではないでしょうか? そういうロボットが活躍するマンガやアニメを観て育った人は、ロボット研究者にもたくさんいます。

しかし、ヒューマノイドが世の中で活躍するようになるのは、おそらく何十年以上も先の話。今の私たちに必要なのは、だれにでもすぐに使えて、毎日の仕事や生活を便利にしてくれるロボットなのではないかと思うのです。私も会社を始めた最初のうちは、イベントなどで人を喜ばせるために、ヒューマノイドをつくっていたことがあります。けれど、それで喜んでもらえるのはわずかな間だけ。イベントが終われば、ロボットは倉庫の隅に追いやられてしまうのです。

せっかく苦労してつくったのだから、いつまでも人の役に立ってほしい。だから、うちの会社では「毎日使い続けられるロボットをつくる」ことを目指して、日々、開発に取り組んでいます。

問題解決に必要なのはコミュニケーション!

イクシスリサーチが開発したロボット。工場やダム、トンネル、橋梁の裏面など、幅広い場所で調査・点検を行う。

現在、私たちがつくっているのは、人が作業するには危険な高所を点検するロボットや、人が入れない狭いところを通って救助活動を支援するようなロボットです。さまざまな作業現場で働く人をサポートするロボットは、作業を行っている人がずっと使いたくなるものでなくてはいけません。仕事相手から「こういうものをつくってほしい」と言われて、そのまま開発を進めても、現場で役に立たないことはよくあります。それは、ロボットを注文する人が「どういうロボットが必要なのか」という点を具体的にイメージできていないことが一因です。

その問題を解決するために、私は作業現場へ足を運び、自分の目でよく確かめて、働いている人たちの話をたくさん聞き、みんなで何度も話し合うようにしています。ロボット開発の仕事でも、コミュニケーションはとても大切です。将来、ロボットをつくりたいと考えている人は、本当に必要なものが何かを見極められるよう、今のうちから人の話をよく聞く習慣をつけてください。そして、自分の意見をわかりやすく伝える力を養えば、道は必ず開けてくると思います。

我が家には、「のこぎりや金づちなどが入った工具箱は自由に使っていい」「テレビゲームは禁止」という二つのルールがありました。遊びの中であれこれ工夫しながら、「ものづくり」の魅力を早くから知ることができたのは、このルールのおかげでしょう。また、両親が休日のたびにあらゆる場所に連れて行ってくれたことで視野が広がり、今の仕事にも役立っていると感じます。私も親となった今、子どもたちを毎週末いろいろな施設やイベントに連れて行き、五感を刺激する体験をさせています。
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