小林宏先生の主な研究成果の一つが、マッスルスーツの開発です。この機械を装着すると、重さ10kg以上の荷物でも、ほとんど重量感を感じることなく軽々と持ち上げられ、腰や肩にかかる負担も軽減します。

「マッスルスーツは、チューブ状の人工筋肉を空気圧で収縮させてパワーを生み出しています。人工筋肉1本で、約150kgの力が出ます。これまで人間の筋力をアップさせる装置については、人間が手足を動かそうとする意思を、脳や筋肉の動きなどから機械に察知・計算させて、人間の意のままに動くものをつくる方向で研究が進められてきました。しかし、今の科学技術では実現させるのが難しい。そこで、機械の動きに合わせて人が動くという逆転の発想から、マッスルスーツの開発に着手しました」

マッスルスーツは2014年から、重い荷物を扱う工場などで働く人たちに向けて、1機あたり月に数万円という値段で貸し出しをスタート。さらに小林研究室では、足腰の弱った要介護者のために、歩行を支援する機械などもつくっています。

「人が生きている限り自立した生活ができるように手助けをすることが、私の研究の大きな目標です」

介護や医療の分野で役立つ機械以外にも、さまざまなものを開発しています。

「少し変わったところでは、人が食べ物を飲み込む嚥下げの動作を行うロボットを開発しています。これは、高齢者が誤って食べ物を食道ではなく肺に送ってしまう事故を防ぐため、歯医者さんと協力して開発しているものです。意外に思われるかもしれませんが、これまで嚥下のメカニズムは詳しくわかっておらず、その解明から始めました」

企業から依頼を受けて機械や装置を製作することも、小林研究室の重要な研究活動です。

「化粧品メーカーから依頼を受け、マイクロスコープで肌のシワやキメなどを分析する装置をつくったこともあります。また、鉄くずなどのスクラップの山の体積を計算する装置や、鋼材を削ったときに生じる火花から材料や成分を認識する装置など、さまざまなものをつくってきました」

企業からの依頼は、いつも具体的なものばかりとは限りません。

「"こんなことで困っているんだが、何とかならないか"などと相談されることも。そんなときは、ロボットや機械をつくるだけでなく、問題解決の方法を考えるコンサルタントのような役割も担います」

小林先生の幅広い研究成果を聞きつけ、入学してくる学生も年々増えています。

「学生たちは女性の体型に適した小型のマッスルスーツや、空気圧を使わないタイプの開発などに挑戦しています。マッスルスーツ以外では、モーターで動かすロボットや、要介護者向けの歩行機などを研究している学生がいます」

研究室に入った学生には、まず設計→加工→制御→の手順を教えます。

「ロボットや機械の設計図を書くのが"設計"。次に、設計図通りに部品を"加工"し、それらを組み合わせる。そして、完成したロボットや機械をコンピュータなどで動かすのが"制御"です」

学生たちは毎日、小林先生に進捗状況を報告しながら、一歩一歩階段を上っていきます。

「ときには工場や介護施設に足を運び、自分の研究テーマを実用化させるために何が必要か、現場から学び取ってもらいます。そうして、一人前のエンジニアへ成長していくのです」

学生たちには普段から、「シンプル・イズ・ザ・ベスト」「一つひとつを確実に」と、アドバイスしています。

「機械やロボットは、どんな人でも使えるシンプルなものをつくることが大事です。そのためには、部品から電気回路まで、一つひとつを確実にこだわり抜いて完成させなくてはいけない。学生たちには、多くの人を幸せにする技術や機械をたくさん生み出してほしいですね」



東京理科大学 工学部 機械工学科
小林宏研究室
小林 宏教授
小林 宏 教授

東京理科大学工学研究科機械工学博士課程修了。東京理科大学講師、科学技術振興事業団研究員などを経て現職。

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