左:『はなとゆめ』冲方丁【著】/ 13年11月刊/角川書店/ 1,575円 Amazonで購入
右:『月と太陽』瀬名秀明【著】/ 13年10月刊/講談社/ 1,680円 Amazonで購入

2013年のグッドデザイン賞を受賞したイプシロンロケット。親子で打ち上げの映像を見て楽しんだ方も多いのではないでしょうか。昔は遠い夢だった技術が、着々と形になっていることを実感した年の締めくくりに、おすすめしたい小説があります。瀬名秀明の『月と太陽』。3・11後の世界を背景に、飛行機、人工衛星、タイムマシンといったテクノロジーと、それを夢見た人間を描く短編集です。

東北に縁があり、かつて研究者だった瀬名さんだけあって、どの話も科学を無邪気に礼賛することなく、災害による傷跡が生々しく残る世の中において科学が担う希望を提示する内容になっています。たとえば、最後に収められた「瞬きよりも速く」。語り手の大学助教授が、オープンキャンパスで高校生に、震災の直後に使えなかったスーパーコンピュータの研究をして何の役に立つのかと問われます。今はわからないと正直に打ち明けた上で、語り手が付け加えたセリフがすばらしい。〈でもぼくはこう思う。未来といまは決して離れたものではない、ぼくたちがうまく認識できないだけで、必ず繋がっているんだと。もがいて、動き続けることで、その繋がりがきっと見えてくるんだと。その小さな思いが誰かのーー誰かひとりでも、誰かの心を動かすことができたなら、未来への道はそこで倍になるんだと〉。

文学を読むことも、今すぐ何かの役に立つとは言えません。でも、心を動かす本は、未来に影響を与えるのです。千年以上前に書かれた『枕草子』がいまだに読み継がれ、愛されているように。冲方丁の『はなとゆめ』は清少納言を主人公にした歴史小説。彼女が『枕草子』を書くまでのことが描かれています。清少納言は28歳のとき天皇の后の中宮定子に仕えることになりますが、知性と教養に恵まれながら、年齢や家柄や容姿に引け目を感じてなかなか表に出られませんでした。彼女が中宮定子に才能を見出され、人気者になっていく過程に心躍ります。

一方、帝に深く愛され、栄華を極めた中宮定子は、次第に政争に巻き込まれていく。その様子を近くで見ていた清少納言が、なぜ〈春は、あけぼの〉で始まる明るい随筆を書いたのか。最後まで読むと、大切な人と過ごした日々のことをできるだけ記憶しておきたいと思うでしょう。




『短歌という爆弾 今すぐ歌人になりたいあなたのために』
穂村弘【著】
13年11月刊/小学館/650円
Amazonで購入

人気歌人による斬新な短歌入門書。絶望的な世界や自意識にがんじがらめになった自分を覆す爆弾に見立てて短歌のつくり方や読み方を語る。文庫化にあたり著者のロングインタビューと枡野浩一による解説も収録。




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