第47回
親の緊張、どうほぐす?

顔の表情は脳神経とつながっている

いよいよ、受験本番がすぐそこまで迫ってきました。

もしかして、受験をする子ども以上に緊張し、焦っている方も多いのではないでしょうか? 子どもを持つ親として、私もその気持ちは十分にわかります。

しかし、そこで注意しておきたいことがあります。実は親の緊張や焦りは、どう隠そうとしても、子どもに伝わってしまうということです。そして親のそういった気持ちは、子どもに不要なプレッシャーをかけてしまいます。

子どもに受験本番をベストな状態で迎えさせたいと思うならば、まずは親がストレスを解きほぐし、心を落ち着かせる必要があります。

前置きが少し長くなりましたが、今回は、親の気持ちを楽にする方法を、脳科学的な見地からアドバイスしたいと思います。

まず、手軽に取り入れられる方法として「顔の表情」に気をつけるという方法があります。イライラしているときや、ネガティブなことを考えているとき、あなたはどういう顔をしているでしょうか? 目は険しく、口は一文字に結んでいるような、筋肉が固まった表情をしているはずです。逆にやさしい気持ちのときや、ポジティブなことを考えているときには、目や口の周りがよく動き、笑顔を浮かべやすい、筋肉が柔らかな表情になっていると思います。

このような「顔の表情」は、実は脳の機能と深くつながっています。具体的には、A10神経群と呼ばれる場所とリンクしているのです。

顔をマッサージすると気持ちもほぐれる

A10神経群は、脳に入ってきた情報を「これは好き」「これは嫌い」というように感情のレッテルを貼って、脳のほかの部位に伝達する役割を持っています。

A10神経群で情報にポジティブなレッテルが貼られたときには、それとつながっている顔の表情筋にも影響が表れ、筋肉の動きが豊かになります。逆にネガティブな情報の場合、思考全体が後ろ向きになることで脳の血流が下がり、機能は低下してしまいます。その影響もまた顔に表れ、表情筋の動きが乏しくなるのです。

このように脳の判断が顔の表情に影響を与えているわけですが、実はこの反応というのは可逆的であり、顔の筋肉から脳に影響を及ぼすこともできます。

イライラしたり、否定的な考えにとらわれたりした際には、まず顔をマッサージして表情筋をほぐしてみてください。そしてその後、鏡に向かって最高の笑顔で微笑みかけてみましょう。

脳というものは、最高に緻密で繊細な器官でありながら、一方で単純な一面も持っており、顔の筋肉の動きにつられて「今は楽しい」と錯覚します。そして脳内ホルモンであるドーパミンが次第に放出され、実際に楽しい気持ちになってくるのです。毎日を楽しく過ごすために、「顔のマッサージ」と「笑顔」を、毎朝の習慣にするとよいかもしれません。

自己保存の本能を抑えおだやかな心になるには

イライラしたときのもうひとつの対処法は、「子どもを尊敬すること」です。

そもそも、なぜイライラしているのかを考えてみてください。多くの場合、子どもが思い通りにならないからという結論になるはずです。相手を思い通りにしようとするのは、脳が自分の立場を守ろうとする「自己保存の本能」に由来しています。この本能が強く働けば働くほど、自分目線でしか物事が判断できなくなり、自分の言葉や態度が子どもの心に与える影響にも頭がまわらなくなります。

イラっときたら、以上のようなことが自分の脳の反応として起きている、と冷静に分析し、自分の言葉や態度が子どもの気持ちをどれだけ動揺させるか、その可能性を考えましょう。そして、最後に子どもがどれだけここまでがんばってきたか、自分にとってどれほど大切な存在かに思いをはせてください。

「ここまで努力できた、この子はすごい」

そう感じたならば、あなたの脳は自己保存の本能の呪縛から解放され、おだやかな気持ちで子どもと接することができるようになっているはずです。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一

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