「生物が、音をどう感じ取り理解しているのかを解明したい」

上川内あづさ氏 (名古屋大学大学院 理学研究科 教授)夢をかなえるために大事なこと3つ

凝り性で本好きの子ども時代

上川内あづさ
東京都出身。ドイツ・ケルン大学および東京薬科大学助教を経て、2011年から名古屋大学教授。2010年10月より、JSTさきがけ「脳情報の解読と制御」研究者を兼任。平成22年度「文部科学大臣表彰 若手科学者賞」、平成24年度「日本神経科学学会奨励賞」を受賞。

小学生の頃から、何事にも地道にコツコツと取り組む子どもでした。中でも、ものを観察するのが好きでした。たとえば、いろいろな種類のミニカーを収集して、並べたり、眺めたり。貝殻を集めていた時期もありましたよ。貝殻は、人形やぬいぐるみよりも、想像力を働かせて自由に遊ぶことができるんです。貝殻一ひとつひとつに名前をつけ、怪獣などに見立てて戦わせて遊んでいましたね(笑)。

また、母が勤めていた図書館へもよく通いました。母がさまざまなジャンルのおもしろい本を紹介してくれたおかげで、読書好きな子どもに育ったんです。図書館で母の仕事が終わるのを待っている間は、読書に没頭。ミステリーや推理小説などが大好きで、怪盗ルパンやシャーロック・ホームズなどを読み漁りましたよ。

小学4年生くらいになると、中学受験を意識するようになりました。前もって勉強をしておけば、私立中学か公立中学かを選択できて、可能性が広がるという両親のすすめで、4年生の後半から受験勉強を始めました。四谷大塚にも、友だちと一緒に通っていましたよ。お茶の水や中野などの校舎へ、公開テストを受けるために子どもたちだけで電車に乗って行くことが新鮮でしたね。ちょっぴり大人の気分を味わいました。四谷大塚の友だち同士では、いい意味でライバル心もあったので、お互いに切磋琢磨しながら過ごせたのがよかったと思います。

志望校は、桜蔭中学と女子学院中学の2校。両方とも受かって、最終的には桜蔭に入学しました。1学年約250名の生徒がいて、まじめかつ勤勉な校風。先生方も同校の出身者が多くいました。私の友だちも、まじめに勉強するタイプが多かったので、「周りと同じぐらいがんばらなきゃ」と意識できたのがよかったと思います。中学時代は、部活で茶道部に入部してお茶の世界を楽しみ、夏休みは図書館で読書に没頭するなど、中高一貫校らしく、のびのびとした学校生活を過すごすことができました。

大学受験勉強はマイペースに 

大学のサークル活動では、自然の中に出かけて野鳥などの生物を観察。

進路は、早い段階から考えていました。高校時代は何をやりたいのかは決っていなかったのですが、東京の総合大学で理系に進みたいという希望はあったので、東京大学への進学を志望。高2からは理系のクラスに入り、塾にも通いました。東大受験とは言え、受験勉強で苦しんだことはなかったですね。同じ勉強をするなら、「おもしろいからやる」と主体的に取り組んだ方が楽しいものです。勉強することに興味を持てなければ、受験勉強も苦痛でしかありませんよね。私の場合、もともと勉強は好きでしたし、興味を持ったことはコツコツと追求していくタイプだったので、新しい知識が増えていくことを楽しんでいました。

勉強は、なるべく学校や塾での授業内で終わらせるよう心がけました。自習も、教科書や問題集をひたすら解くだけ。だらだらせずに、時間を決めて集中した方が効率的だと思います。受験勉強は長期戦なので、何か月も徹夜するような生活では体がもちません。むしろ、きちんと寝て体調を崩さないように気をつけていました。ですから、睡眠時間を削ってまでガリ勉をした経験もありません。塾が終わって夜9時には家に帰り、帰ったら寝るという生活でした。

生物学的にも、睡眠を取ると記憶が固定されると言われています。自分の経験からも、寝る前に勉強した方が効率よく覚えられたような気がします。

昆虫の聴覚と脳の仕組みを研究

海外旅行をはじめ、留学や国際学会の出張など、渡航経験は豊富。写真はタイにて

大学4年生からは、ミツバチの研究を行っていました。その後、大学院の博士過程まで6年間、ミツバチの研究に打ち込みました。

ミツバチはとても頭がよく社会性のある昆虫で、環境や状況に合わせて自らの行動を選んでいます。たとえば、花のある場所を覚えて、巣に戻って仲間たちに知らせることなどができます。そうした社会的な行動を取るために必要な仕組を研究していました。その結果、物を覚えるために重要な役割を果たす脳の領域に、カルシウムを使って情報伝達する仕組みが集中的にあることを発見しました。学位を取ってからも、昆虫の脳の研究をずっと続けています。

研究対象は、10年前からショウジョウバエに移行しました。ショウジョウバエを選んだのは、遺伝学などの技術を用いて実験的な操作がしやすく、さまざまな実験が可能だから。研究テーマは、脳の中で音の情報がどのように処理され、特定の意味を持つのかという仕組みを知ることです。

実はショウジョウバエは、音を聞いて、その音の意味を理解するという、高度な行動を取っているんです。オスは求愛するときに、羽音を震わせて求愛歌を発信します。一方、メスは求愛歌を聞いて、自分の気に入る音かどうかを判別します。おもしろいことに、録音した求愛歌をスピーカーで鳴らしてオスに聞かせると、どこかで誰かが求愛していると勘違いして、相手のメスを探し始めるんですよ。しかも、ほかの音を聞かせても、反応しない点が大きな特徴です。先日、高校生が研究室の見学に来たときにも実験を行ないました。そのときは、ショウジョウバエにアニメソングを聴かせたのですが、全然反応しませんでした(笑)。なぜ自分たちの羽は音だけが意味のある音だとわかるのかは、まだわかっていません。その理由を解明したくて、今も同じ研究を続けています。

何事にも、一生懸命に取り組んでみよう!

研究室のメンバーで房総半島に旅行したときの一枚。

これまでを振り返ってみると、夢を抱いて、その夢をかなえようと思って生きてきたわけではなく、自分にできることを一生懸命やってきただけだと思います。それは私生活でも言えること。現在は、子育てと研究生活とを両立していますが、限られた時間で集中して「できることを一生懸命やる」という姿勢を貫いています。私がそうやって目の前の研究に一生懸命になれるのは、ただ純粋に、音という情報や音楽が、なぜすばらしいと思うのかを知りたいという強い気持ちがあるからです。今後の研究目標に関しても「理解したい」というひと言に尽つきますね。

物事に興味を持つことはとても大切です。今は私も教える側の立ち場なので「これっておもしろいよ」と伝えなければ、学生たちにも興味を持ってもらえないと実感しています。読者のみんなにも、おもしろいと思えるものを見つけて追求していってほしいですね。さまざまな体験を通じて興味の幅を広げていくと、次第にやりたいことや目標が見つかると思おもいます。

本を読む習慣を身につけさせてくれたことに感謝しています。「本を読みなさい」と押しつけるのではなく、自然と読書が好きになるような環境をつくってくれました。図書館で本を紹介してくれたり、おもしろい本の見つけ方をアドバイスしてもらったりして、どんどん読書への興味が広がっていきました。また、私の考えを尊重してくれたことも心強かったですね。大学院へ行くときやドイツへ留学するときなど、私の決断に反対することもなく、応援してくれて、本当にありがたいと思いました。
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