第44回
苦手科目の正しい勉強法って?

嫌いなものに対して脳は力を発揮できない

私は子育てに関する講演を行う機会がよくあるのですが、そこで親御さんから苦手科目に関するこんな質問をよく受けます。「うちの子は算数が苦手で……。私も苦手だったし遺伝かもしれませんが、克服できるでしょうか?」 

親の能力がどこまで子どもに遺伝するかは、まだ科学的に証明されているとは言えないのでここでは触れませんが、いずれにせよ、苦手科目が合格への大きな障壁となるのは事実。完全克服とはいかなくとも、せめて平均レベルにまではもっていきたいところです。 

苦手科目は、得意科目の勉強よりも多くの時間がかかります。しかし、だからと言って、ただやみくもに勉強量を増やすことはおすすめできません。

なぜなら、脳は「嫌だな」「苦手だな」と感じている状態下では、理解力や思考力が落ち、本来の力が発揮できないからです。このようなとき、「なんでできないの」などと叱ってしまうと、さらに苦手意識が深まり、脳の力がより低下してしまいます。逆に、「楽しい」「おもしろい」と感じている物事に対しては、その力を最大限に活用して働きます。「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、これは脳科学的にも正しいものなのです。

何ができて何ができないかを明確に

脳の中心部に位置する「A10神経群」という部位には、私たちが見聞きなどして得た情報に対し「おもしろい」「嫌だ」などといった「気持ちのレッテル」を貼るような働きがあります。

レッテルを貼られた情報は、前頭前野でそのレッテルを基に認識されます。この際に脳が「好き」と感じたり「楽しい」と判断したりした情報は、自己報酬神経群という部位を介して脳内をいくども巡り、その情報をより深く考えるという、思考のプロセスが働くのです。これが「好きこそものの上手なれ」の正体です。 

このような脳の性質上、苦手科目と向き合う際には、苦手科目への興味や関心を芽生えさせ、脳に貼りついた「嫌い」というレッテルから解放してあげる必要があります。 

そのために、親は何をすればいいのかと言えば、まずは苦手科目の中でも「何ができて何がだめか」を明確にすること。具体的には、基礎教材に立ち返り、簡単な問題をたくさん解かせます。その際、基礎部分でも理解が不十分な部分が見つかり、できる部分とできない部分が明確になってきます。

たとえば6年生の秋の時点で、基礎教材でできないところを発見したら、親としては焦るかもしれません。しかしこれは脳の性質上、致し方ない部分です。 人間の脳には、自分を守りたいという自己保存の本能があります。そのせいで、できるふりをしたり、できないことに目をつぶったりしてしまいます。たとえ手を抜いていたつもりはなくとも、自己保存の本能から、無意識に避けている部分は必ず出てくるもの。それを親が客観的な立場から判断してあげることが重要です。

できる部分をやり成功体験を積み重ねる

できる部分とできない部分がわかったら、できない部分に取りかかると思いがちですが、それでは嫌いのレッテルははがれません。逆にできる部分、すなわち簡単でほぼ間違えないようなところを、敢えてたくさん解かせてあげてください。

嫌いを好きに変えていくカギとなるのは、"成功体験"です。簡単な問題でも、「苦手分野なのにできた」という成功を積み重ねることで、脳は次第に理解することに喜びを感じるようになります。 そして、できたときにはしっかりほめてあげることで脳は達成感を覚え、苦手意識は次第に薄れていきます。 

ほめる際のポイントは、親が「何ができたのか」をしっかり把握して言葉をかけること。「前回よりも早い時間で解けたね」「正確に書けたね」など、その内容が具体的なほど、ほめる効果が高まります。 このようにして成功体験を重ねることで、脳のレッテルを嫌いから好きに貼りかえられれば、いつの間にか苦手科目を克服できているでしょう。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一

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