第41回
親の気持ち、どう子に伝える?

相手に気持ちが伝わるのは脳の仕組みが関連している

中学受験期というのは、一般的に親子のコミュニケーションがかなり密になる時期です。「わが子とは一心同体」という意識で、子どもの成績に一喜一憂する人も多いでしょう。ただし、「親の心、子知らず」という言葉があるように、いくらわが子とはいえ、常に親の気持ちを理解してくれるわけではありません。時には言いたいことが伝わらず、歯がゆい思いをすることもあるでしょう。また、互いの誤解から、ケンカになることもあるかもしれません。そのような子どもとの壁を、できるだけ取り除き、親子で気持ちを重ねながら進んでいくためにはどうすればよいのでしょうか。

ここで、そもそも人の気持ちは、なぜ相手に伝わるかを考えてみましょう。回路でつながっているわけでもないのに、相手の気持ちがわかるということは、思えば不思議なことです。しかし、その理由は脳の仕組みを知ることで理解できます。

自分の思考や感情が相手に伝わるのは、脳の「ダイナミック・センターコア」という神経細胞群が、"同期発火"を起こすからです。脳は、相手の表情や身振り手振り、話の内容などの情報を受け取ると、相手の神経細胞の動きと同じように、自らの神経細胞を働かせようとします。そうすることで相手の気持ちを再現し、理解を深めるわけです。これが同期発火です。

物事を楽しむ気持ちが強い同期発火を起こす

脳には生来の「仲間になりたい」という本能がありますが、同期発火はその最たる仕組みと言えるかもしれません。

相手の脳に同期発火が強く起きるほど、自分の気持ちが伝わりやすくなります。したがって、わが子に自分の思いを理解してもらうためには、わが子の脳に入って、一緒に同期発火を起こせばいいわけです。

子どもの脳に入るためには、親の気持ちを先に出すのではなく、子どもの立場を優先し、子どもの言っている言葉に「そうだよね」と、親がまず同期発火し、常に前向きな、「楽しい」「おもしろい」「感動した」というような、プラスの会話を心掛ける事です。受験勉強は楽なものではありません。しかし「中学受験を、親子で共に成長するよい経験として楽しむ姿勢」が、子どもにプレッシャーをかける事なく、親子で気持ちをひとつにしてあらゆる困難を乗り越える原動力になります。

私が、あらゆる困難に前向きに立ち向かう事が出来るようになったのは、私の小学校時代の担任の先生のおかげです。先生は、いつも子どもたちの「楽しむ気持ち」を大切にしてくれました。

ある日突然、「今日は夕食を食べたらもう一回、教室に集合」と言い、集まった子どもたちに本を読み聞かせてくれました。夏休みには、近隣のお寺で、一緒に寝る前に子ども心をくすぐる楽しい話を聞かせてくれました。先生のプランやアイデアは、いつも私たちをわくわくさせ、毎日の学校が楽しくて仕方ありませんでした。私たちは無条件に先生やクラスメートをお互いに信頼し、先生の言うことなら素直に同期発火し、学習効果も抜群でした。

子どもを尊敬し共感を示すのが大切

ここに紹介した話の中には、親子でこころをひとつにして、受験を機会に、お互いに成長してゆく4つのポイントがあります。

まずは、「『そうだよね!』といって子どもの脳に入る会話」。仮に考えが違っていても、まずは「そうだよね」と言い、その後「お母さんはこの方がいいと思うんだけど、どう思う?」と問いかける事です。

そして次に受験と言う難関を乗り越えるためには、親も子どももテキパキと目標をこなす「環境の統一・一貫性をつくり上げる事」が大切です。子どもだけにしっかり勉強しろ!と言っても、親がダラダラしていたり、決断・実行が遅くなると、3番目に必要な「共通の目標を持つ事」はできません。子どもだけではなく、親もときには、子どもの学習内容を一緒に考えるなど同期発火する事です。そしてもうひとつ大切なのは、「子どもを尊敬する事」です。その気持ちが子どもに伝わると、子どもは親の言うことを尊重して聞くようになります。

このようにしてお互いに同期発火を起こし続けることで、親子のコミュニケーションはどんどん良好になっていくはずです。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一

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