第40回
上手なほめ方、叱り方って?

ほめることは脳の栄養 叱り続けると「逃避脳」に

子どもの教育における、ひとつの大きなポイントが、「ほめ方、叱り方」です。できればほめて伸ばしたいけれど、甘やかしすぎずに叱るときは叱らなければ……。親なら誰もが、飴と鞭の使いどころを試行錯誤していることでしょう。

脳の仕組みから考えると、できる限り、ほめて育てたほうがいいといえます。
ほめるということは、子どもの脳に報酬をあげる行為です。脳は、報酬が予想される環境にあると、高水準の力を発揮するようにできています。つまり、「これができたらほめてもらえるだろうな」と思いながら勉強をすることで、脳の力がより引き出されるのです。同時に自己報酬神経群なども活発化して、脳自体も発達していきます。
ほめることは、子どもの脳が成長するための最大の栄養なのです。

一方で、叱られるということは、子どもの脳にどんな影響を及ぼすのでしょう。
叱られることは当然、脳にとってのストレスです。子どもは、自分を守ろうとする「自己保存の本能」が強いこともあり、たとえ親の言葉でも、怒りや批判の矛先が自分に向けば、こころを守ろうとします。
もし子どもを毎日叱り飛ばして育てたら、脳はこころを守るために逃避をはじめ、相手の話を受け流します。聞いたふりをする、嘘をついたりする。これが日常化すると、人の話を聞こうとしない脳が出来上がり、物事が長続きしない、困難から逃げてしまう、「逃避脳」になります。

子どもを叱る時は、必ず、逃げ道を用意してから叱るようにしましょう。子どものこころをゆがめると取り返しがつかなくなるからです。

叱るときも、まずはオウム返しに肯定する

とは言え、ダメなものはダメだと教えることもまた大切な教育です。しかし、一体どのように叱れば、脳にとってもプラスに働くのでしょう。

おすすめしたいのは、"オウム返し"で叱る方法です。
たとえば我が子が、勉強すると約束した時間になってもゲームをやり続けているとします。勉強が遅れることもありますが、そもそも約束を守らないことが問題ですね。そういった場合、親は感情に任せて怒鳴ってしまうか、約束を盾にとって子どもを論理的に叱るか、多くの場合はその2パターンに分けられるでしょう。

しかしそこで親が取るべき行動は、ひとまず言いたいことをぐっと抑え、
「なぜ約束を破ってまでゲームを続けていたのか?」と聞いてみましょう。

「だって、最高スコアが更新できて、新しいステージに進めたんだもん」

このような子どもの答えを、否定してはいけません。ここでオウム返しを使います。
「そっか、最高スコアが出たんだね、新しいステージも気になるよね。でもそれでも約束は守らなきゃいけないんだよ」

いきなり叱られると、子どもの自己保存の本能が働き、脳はどうしても守りに入ってしまい、成長にはつながりません。否定ではなく肯定から入り、まずは子どもを受け入れてあげる。そのあと改めて間違いを指摘する。そうすると、子どもの脳の受け取り方が肯定的に変わり、素直に親の言葉を聞けるようになります。

具体的にほめることで喜びはより大きくなる

ほめ方にもまた、コツがあります。ポイントは、できるだけ具体的なほめ言葉を使うことです。

子どもが苦手科目でいい点数を取ったときには、点数をほめるより、「前回と比べて、こことここができるようになったね!やっぱりやればできるんだよ。よくやったね、すごいね!」とほめます。
なぜいいのか、どうしてほめられたのかが具体的に伝われば伝わるほど、子どもの喜びは大きくなっていきます。それはすなわち、脳に対する報酬も多くなっているということです。

また、子どもの好きなことや将来の夢と絡め、「これができたってことは、あこがれの○○に近づいたね」といったほめ方も効果的でしょう。
ほめるときは、大げさなくらいがちょうどいいと思います。親にほめられたうれしさに比例して、子どもの脳はぐんぐん育っていくのですから。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一

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