左:『想像ラジオ』いとうせいこう【著】/ 13年3月刊/河出書房新社/ 1,470円 Amazonで購入
右:『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』山田詠美【著】/ 13年3月刊/幻冬舎/ 1,470円 Amazonで購入

わたしが通っていた小学校では、毎年夏になると原爆についての特別授業が行われていました。映画を観て本を読んで、わからないなりにいろいろ考えていたと思います。東日本大震災はどんな作品を通して子どもたちに伝えられていくのでしょう。3・11をテーマにした小説はすでにいくつも書かれていますが、大人にとっては、いとうせいこうの『想像ラジオ』が、未来の古典になるにちがいありません。

「想像ラジオ」は、昼夜を問わず聴いている人の想像力の中でだけオンエアされる不思議なラジオ番組です。パーソナリティをつとめるのはDJアークこと芥川冬助。東京の音楽事務所で働いていた彼は、つい最近、生まれ育った海辺の小さな町に帰ってきました。家族は妻と息子がひとり。読み進めていくうちに、芥川は大地震によって発生した津波に流され、杉の木のてっぺんに引っかかっているということがわかります。

オカルトにならないように、生者と死者をつなぐ。困難な試みに著者は成功しています。特に東北でボランティア活動をする青年と小説家が、被災者ではない人間が亡くなった人たちの思いをを想像することの是非について議論する第二章は必読。あの日からずっと心に重くのしかかっていたものは何なのか。少しだけわかった気がします。シリアスな題材をとりあげていますが、DJアークの語り口はポップで、作中でかかっている曲も聴きたくなる。現実にあった悲しい出来事を背景にしながら、希望の光が残る一冊です。

山田詠美の『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』も、死者と生者の関係を描いています。東京郊外の瀟洒な一戸建てで暮らす澄川家。両親ともに再婚で、4人の子どもは半分しか血のつながりがないけれどみんな仲よし。そんな幸せな家族が、落雷による長男の死をきっかけに崩壊します。息子を失いアルコール依存症になってしまう母、残された子どもたちの苦しみ、何もできない父。家の中は荒み、経済状況も悪化していく。

継母の愛を求め傷つく次男が語り手のパートはとても切ないのですが、最終章で一家が再起のためにあることをする場面がすばらしい。大切な人の死を乗り越えることはできなくても、死者と一緒に人生を楽しむことはできると信じさせてくれるのです。




『伊集院静の流儀』
伊集院静【著】
13年3月刊/文藝春秋/ 560円

震災後を生きる若者に向けたメッセージ、各界著名人との対談、人生相談、エッセイ、短篇小説など、最後の無頼派とも呼ばれる作家のエッセンスを結集。〈すぐ役立つ人になるな〉など大人の名言がいっぱいです。




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