地球上の多くの人々は必要なものやサービスを十分に手に入れることができていません。「限りある資源と、できる限り多くの人々のニーズとの間にどう折り合いをつければよいのか。それが経済学という学問の根幹的なテーマです」と、グレーヴァ香子先生は話します。

「経済学は大きく分けて、政府が行う経済政策や国家間の経済などを研究するマクロ経済学と、企業や家計など国より小さい単位の経済活動を研究対象とするミクロ経済学に分けられます。ただ、企業や家計などの経済活動の集合体が国家経済になるため、両者はつながりを持った学問と言えるでしょう」

グレーヴァ先生の専門分野はミクロ経済学。「ゲーム理論」という応用数学を取り入れて、研究を進めています。 「ゲームと言っても、テレビなどで遊ぶものとは少し異なります。"他者の目的や行動を予想しつつ、自分にとってメリットのある行動を考える"という戦略的な思考全般を指します。その際、数学的なスキルを用いて、最適な行動とは何かを分析するのがゲーム理論。たとえば、家族旅行の行き先を決めるときに、家族内でどう意見を調整するかというのも一種のゲームで、結論を数学的に導き出すことができます。ゲーム理論はもともと、経済学だけを念頭に作られた学問ではありません。しかし、さまざまな専門領域に応用され、近年ではミクロ経済学でも盛んに取り入れられるようになっています」

ゲーム理論とミクロ経済学を組み合わせると、ある企業のビジネスモデルがどう発展していくかなど、幅広いテーマについて予想することができます。グレーヴァ先生自身の最近の研究分野は、「出会いと別れ」をゲーム理論に導入しようというもの。「『出会い』とは、消費者が新しい商品を手に取って購入する、またはネットショップを開いてお客を呼び込むなどといったことを意味します。一方、継続的に買っていた商品の購入をやめる、ネットショップを閉鎖するといったことが『別れ』です。ひとつの会社で定年まで働き続ける人が少数派になるなど、流動性が高まっている現代において、この分析が役立つのではないかと考えました」

具体的には、ネットショップを運営する人の立場で考えると、次のように分析できます。 「まず、"顧客と信頼関係を築き、長期に渡って買ってもらう"という『出会い』を大切にする方法があります。一方、"過剰な宣伝文句を謳い、短期間で儲けて早々に店を閉める"という『別れ』を重視するやり方もあります」 ゲーム理論では、後者のような悪質な行動を取ることも、選択肢のひとつとして想定されています。 「しかし、次々と相手を変えていくことは短期的にはメリットがあっても、お客から信頼されていないと大きな買い物をしてもらえないなど、デメリットもあります。悪質な業者が増えるということは、カモが減ることでもあるので、儲からなくなり、反対に長期的信頼関係を持った取引ができる人たちが増えていくことができ、長期的にはどこかでバランスが成立します。このようなことが数学的に証明できます」

グレーヴァ先生が指導する学生たちも、ゲーム理論を応用して、さまざまな分野に目を向けています。 「競馬について研究したり、学校の入試制度に目を向けるなど、研究テーマは多岐に渡ります。学生の意見を尊重する一方で、ゼミでは"わかりませんと言ってはいけない"というルールを課しています。間違ってもいいので、自分なりの答えを導き出し、自分の言葉で説明することを求めています」

そのため、プレゼンテーション技術の指導にも力を入れているとのこと。 「学生にプレゼンをさせるときは、ほかの学生に『○』や『?』を書いたカードを持たせ、話の内容が理解できたかをジャッジさせます。自分が何かを理解できたというのは、ほかの人にもわかるように説明できるということ。難しい課題ですが、あきらめずに何度も考え直し、社会に出てから役立つ力を身につけてほしいと思います」



慶應義塾大学 経済学部
グレーヴァ香子研究会
グレーヴァ香子教授
グレーヴァ香子 教授

慶應義塾大学経済学研究科修士課程修了後、
米・スタンフォード大学博士課程修了。
著書に『非協力ゲーム理論』(知泉書館)など。


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