左:『残り全部バケーション』伊坂幸太郎【著】/ 12年12月刊/集英社/ 1,470円 Amazonで購入
右:『若干ちょっと、気になるニホン語』山口文憲【著】/ 13年1月刊/筑摩書房/ 1,680円 Amazonで購入

人の真似をするのが大好き。「どこで覚えたの?」と大人を驚かせるような言葉を急に使いはじめたりしますね。同じ日本語なのに、世代が異なると通じなくなることもある。言葉は日々変化しているのです。

山口文憲の『若干ちょっと、気になるニホン語』は、街角で見つけた不思議な日本語を採取したエッセイ集。おむすび屋がなぜ〈おむすびやなので/駅のことはわかりません〉という掲示を張り出したか、新しい日本語の最前線である女の人向けグッズの世界、定年退職挨拶状文例集に氾濫する珍妙な言い回しなど、どこがおかしいのかを解説しています。

特に興味深いのが、本当は歴史が浅いのに昔からある言葉のような顔をしている〈なりすまし新語〉の話です。たとえば情報の〈ひもづけ〉。多くの会社で日常的に使われていますが、もともとはIT業界用語だったと初めて知りました。仕事で商品名を考えたり、公的な文章を書く機会がある人におすすめの一冊。ひとつの項目が2ページで完結するので、通勤電車の中でも読みやすいです。


伊坂幸太郎は、日本語の使い方がユニークな作家だと思います。『残り全部バケーション』は、裏稼業についている二人組の現在と過去を巧みな構成で描く長編小説。一つひとつの章が独立した短編として楽しめます。飄々としている岡田と、荒っぽいけれど憎めない溝口。犯罪の下請けをしているコンビの物語で、児童虐待や殺人事件の話が出てくるのに、読むと前向きな気持ちになれるのが伊坂さんらしい。

最終章の「飛べても8分」では、仕事中に事故にあい入院した溝口が、同じ病院に意外な人物を発見する。タイトルの由来は〈とんでもハップン〉。英語の「never happen」から来ていますが、いつのまにか〈飛んでも八分、歩いて十分〉と言われるようになった、昔の流行語です。飛べても歩くのと二分しかちがわないとしたら、飛ぶことに意味はないのかもしれない。それでも溝口は、飛べるなら飛びたいと言う。見舞いに来た仲間との雑談に何気なく出てくる言葉ですが、閉塞感のある状況に風穴を開けます。溝口のジャンプを見届けたら、きっと〈とんでもハップン〉という死語に愛着を覚えるようになるでしょう。




『夜行観覧車』
湊かなえ【著】
13年1月刊/双葉社/ 680円

両親も子どもたちも絵に描いたようなエリートの高橋家と、無理して高級住宅地にマイホームを建てた遠藤家。ふたつの家族が抱える闇を描きます。1月18日からTBS系でドラマも放映中の話題作が文庫化。




今月の新刊案内
仕事について考えてみる秋
「子どもには世界を視野に入れて夢を追ってほしい」と考えているお父さんお母さんに、ぜひ読んでいただきた...>>続きを読む
今月の新刊案内
深まる秋を彩る秀逸な物語たち
児童文学のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した上橋菜穂子さん。大人も夢中にさせる...>>続きを読む
サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。