第23回

『本にだって雄と雌があります』

小田雅久仁【著】
12年10月刊/新潮社/ 1,890円
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『廃墟建築士』

三崎亜記【著】
12年9月刊/集英社/ 525円
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廃墟に魅せられ、廃墟を「新しく」造り続け「私」。表題の『廃墟建築士』ほか、建物をめる不思議な物語4編を、直木賞候補にも挙がる著者が描く。

『らくだこぶ書房 21世紀古書目録』

クラフト・エヴィング商會【著】、
坂本真典【写真】
12年4月刊/筑摩書房/ 1,050円
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ある日未来の古書目録が届き、注文してみると、不思議な本が次々と現れた──。装丁の仕事も手がける著者ならではのデザインセンスが光る一冊。


小田雅久仁の『本にだって雄と雌があります』は、本を愛する一家の四代記。平凡な会社員の土井博が、息子の恵太郎に、祖父・深井與次郎の一生と、彼が集めていた「幻書」についてユーモアたっぷりの口調で語ります。前半はくすくす笑いながら読んで、終盤になるに従って胸をぎゅっとつかまれる。まだ少し日にちが残っていますが、今年ベストのファンタジー小説と言い切らせていただきましょう。 

政治学者の與次郎は夥しい冊数の書物を蒐集しており、深井家には〈書物の位置を変えるべからず〉という掟がありました。小4の夏、博がその掟を破ってしまったとき、一冊の本が鳥のように部屋を飛び回ります。それは本と本が結婚することによって生まれた「幻書」でした。與次郎は特殊な蔵書印を押して「幻書」を捕まえます。まず本が生き物のように子どもを産むという発想が楽しい。たとえば作中では、サルトルの『嘔吐・壁』とエンデの『はてしない物語』の間に『はてしなく壁に嘔吐する物語』という本が生まれますが、自分の蔵書の中でどの本とどの本を結婚させたらおもしろいかなあと妄想してしまいます。

また夫婦愛の物語であるところもすばらしい。博は〈人間が人間に与えられるものの中でもっとも価値のあるものはカネでもなければ知恵でもなく、時間なのだ〉と言い、與次郎が失読症だった妻のミキに、新聞や本を読み聞かせたという話をします。自分が大好きな読書の時間を愛する妻に贈ったわけです。そして與次郎が亡くなるときに、ある美しい奇跡が起こる。自分の大切な人にも、本を読む時間をプレゼントしたくなる一冊です。 

本が空中を飛ぶ話で思い出すのが、三崎亜記の『廃墟建築士』に収録されている「図書館」という中編。かつては野性の本の群れだった図書館が、夜間だけ本能を取り戻し飛翔する。その様子を公開し、観客に見せようとした人間たちが遭遇する不可思議な出来事を描いています。クラフト・エヴィング商會の『らくだこぶ書房21世紀古書目録』は、未来から届いたという設定で架空の本を紹介。茶柱について書かれた本とか『絶対に当たらない裸足占い』とか、もし現実にあったら読んでみたくなります。全体の造りにも驚く仕掛けがあって、デザインも素敵。ぜひ手にとってみてください。

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