日本では1960年代頃から街並みが均質化し、昔ながらの町家や美しい景観が次々と失われていきました。現在では、多くの都市で同じようなコンクリートの建造物が建ち並びます。この変化により都市の利便性は向上しました。しかし、生活する人の幸せに結びついているのでしょうか。そんな疑問に真正面から取り組んでいるのが、門内輝行先生です。

「地域で培ってきた文化を消滅させることなく、いかに地域の個性を生かした街をつくれるか。それが、私の研究テーマのひとつです」 

門内先生は、街に暮らす人とその環境の関係性を重視しています。

「人が暮らす環境は、人工的な建造物がつくられる前から存在していました。私はその点に注目して、どうすれば人間と環境の関係を調和させることができるのか、生活の質を向上するにはどうしたらよいかと言ったテーマを考えながら、建築や都市環境のデザインを研究しています」

門内先生は街のデザインについて、「ものをつくるだけではなく、関係を創り出すことも大切」と語ります。

「たとえば、建物などを撤去したことにより、遠くに山を臨む美しい風景が広がるようになったとすると、これもひとつのデザインと言えます。つまり、街や建物を取り巻く環境全体がデザインの対象になるのです」

門内研究室では、建築・都市記号論と設計方法論を中心とする幅広い視点から、人間と環境の関係を読み解きます。そして、人間にとって望ましい建築・都市空間をデザインする方法を探究しています。「研究の鍵を握るのは記号論です。記号とは文字通り、何らかの意味を表すしるし。たとえば、"赤信号は止まれ"と言う意味があるのと同じように、街の景観やデザインも記号としての意味を持つのではないかと考えています」

その考えを実証するために、日本の各地に残る200か所以上の伝統的街並みを調査しました。その調査結果を元にコンピューターを駆使して、街並み景観の仕組みを分析しました。

「その結果、伝統的な街並みには美の秘密があることがわかりました。屋根・柱・窓と言った要素の数が限られており、それらを適当に変形し、組み合わせることにより、景観のバリエーションが生まれているのです」

そのほかに、街に暮らす人たちの行動が、街の景観に大きな影響を与えていることも明らかになりました。

「京都の中心部には約120メートル四方の街区があり、住民は道側に建物を建て、奥に庭を設けています。これにより、街区の中心に緑地ができています。これが一部の住民だけの行動であれば、奥の緑地は生まれません。住民全員が"建物を前に建て、後ろに庭を作ろう"という約束を守るからこそ、特徴的な街区が生まれるのです。また、家の中には『通り庭』と呼ばれる土間が設けられています。これが奥の庭と表の道をつなぐ空気の通り道となり、エコロジー装置としての役割を担っています。これらの研究成果を踏まえて、京都の都市景観のデザイン原理を解明することに力を注いでいます」

門内研究室では、建築学に関する知識を学生に実践させるために、卒業制作では3次元の模型を作ります。

「学会や企業のコンペにも積極的に参加させています。これまでにシェルター学生設計競技(最優秀賞)、第19回建築環境デザインコンペティション(佳作)、第4回三井住友空間デザインコンペ(佳作)など多くの賞を受賞しています」

このほかにも、設計を進める上でのプロセスを調べるために人間の思考過程を調べたり、自動車メーカーと協力して街・人・生活の関係性から見たモビリティ(移動状況)を調査するなど、幅広い内容の研究に取り組んでいます。「ほかの人とコラボレーションするためには、まず自分自身を磨かなくてはいけません。ただし、孤立していてはよいものは生まれないでしょう。学生には人とのつながりを大切にしながら、研究を続けてほしいと思います」

京都大学大学院 工学研究科
建築学専攻 建築環境計画学講座
建築環境計画学分野
門内輝行 研究室
門内 輝行教授
門内輝行 教授

京都大学卒業後、東京大学大学院修士課程修了。
その後、東京大学生産技術研究所助手、
早稲田大学助教授・教授を経て、
2004年より現職。1998年に日本建築学会賞を受賞。

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