第33回
男女の脳って違うの?

生まれたときから違う男性と女性の脳

小学校低学年の子どもに、絵を描かせるとします。男の子の多くは、電車や飛行機など乗り物の絵や、自分がなりたい人の絵を描きます。一方で女の子は、自分の家やお花など、身の回りにあるものの絵を描きがちです。また、子どもの話を聞いていると、男の子より女の子のほうが、圧倒的に話し上手である場合が多くあります。 

男女それぞれの子どもがいたり、教育現場に携わる人の多くが、このような男の子と女の子の能力の違いを、明確に感じているのではないでしょうか。 

もうずいぶん前のことですが、『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社)という本が、話題となったことがありました。なぜ男女で得意不得意が違うのか、という理由を脳の違いに求めているのですが、はたしてこれは本当でしょうか。 

脳科学的に見ても、男女の脳は同じではありません。男女の脳の違いを知ることは、教育的にも非常に有意義であると、私は考えています。まずは、男女の脳がなぜ違うのか、その理由から考えてみましょう。

男女の脳の構造から得意不得意がわかる

有史以前から、男性は狩りなどで食料を調達して家族に与え、女性は子どもを産み、育て、守るという生活をしてきました。もはやそれは、遺伝子レベルでプログラムされ、その生活に脳も適応したのではないかとも考えられています。 

このため、男の子は遠い未来やまだ見ぬものをイメージしがちで、女の子は具体的な未来や身近なものを大切にするという傾向が生まれているとも想起できます。また、自己主張から争いになることを恐れない男の子の気質に対し、女の子の方が同種意識や自己保存の本能が高く、表だっての争いは避けたがるという傾向も理解できます。 

現代人の脳の構造を見ても、男女の差異は明らかです。構造的な一番の違いは、左右の大脳半球の間にあり脳をつないでいる"脳梁"という部分の大きさです。脳梁は、女性の方が大きくなっており、神経細胞の数も女性が男性に勝っているといえます。

左右の脳の伝達部が大きいということは、それだけ脳の間の情報のやりとりがしやすいということ。言語中枢への情報も豊富に入ってくるので、言葉を使うのがうまいというわけです。逆に男性の脳は、左右での情報の行き来が少なく、それぞれの脳が別々に機能している機会も多くなります。したがって、言語中枢に入ってくる情報も女性より少ないということになります。 

この構造の差異は、生まれ持ったものなので、小さな頃からその違いは現れてきます。だから一般的に、女の子のほうが言葉を話すのが早く、小学生になってもなかなか男の子は口で女の子には勝てないのです。 

では、男性のほうが脳的に劣っているのかといえば、もちろんそうではありません。男性の脳にも、女性より得意な分野がちゃんとあります。

違いを理解しようとする気持ちが一番大切

脳の構造的な違いから、男性は右脳の前頭葉と頭頂葉を使う機会が多くあります。それで磨かれる能力は、"空間認知能力"です。空間をイメージする力は、有史以前の狩りのときにも、獲物との距離や間隔を推し量る際に大いに役立ったことでしょう。空間認知能力が優れている人は、地図を逆さにしても読めますし、独創的な考えや運動能力を発揮していることも多くあります。小学校の教育でいえば、算数の図形問題が得意な男子の割合に比べ、女子の割合が大きく下がるのは、この空間認知能力の差が理由のひとつとなっています。

どうでしょう。我が子に当てはまる部分はあったでしょうか。もちろん、今まで説明したことは、あくまで一般論であり、おしゃべりな男の子や、図形問題が得意な女の子も当然たくさんいます。

男女の脳の違いは明らかにあります。それを踏まえてもっとも大切なことは、男女でも、親子でも、相手を理解しようと務める気持ちを持つことです。違いを個性として認め合い、共存することを、脳は求めます。知識として男女の脳の違いを知り、そこから目の前の子どもの行動を理解しようと務めること。それが親として最も大切なことだと考えて、子育てに生かすようにしましょう。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一

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