「最先端のミツバチの研究で日本の農業問題にも貢献したい」

高橋純一氏(京都産業大学 総合生命科学部 生命資源環境学科 准教授)夢をかなえるために大事なこと3つ

昆虫と野球、そして読書に熱中していた子ども時代

私は、外で遊ぶのが大好きな子どもでした。小学校では、休み時間を過ぎても運動場で遊んでいたり、先生の言うことを聞かなかったりして、よく叱られたものです。 

そんなわんぱく坊主だった頃ころから、昆虫が大好きでした。最初は、クワガタやカブトムシのカッコよさに惹かれ、昆虫に興味を持つようになったんです。春から夏にかけては、昆虫採集に夢中になっていました。カブトムシは夜行性なので、日の出前や夜中にこっそりと家を抜け出して虫採りに出かけたことも。昆虫採集は自然を相手にするため、必ずしも成功するとは限りません。どちらかというと、採れない日の方が多かった。どうすれば上手くいくのかを考えるのも楽しみのひとつでしたね。 

昆虫にはまった一方、野球にも熱中していました。小学生のときは、野球選手になりたいと真剣に思い、一年中、野球をしていました。 

そして、困ったことに勉強にはちっとも興味を持てなかった(笑)。両親から私立の中高一貫校への進学をすすめられても、公立中学校に行きたいという意思を通しました。中学生以降も勉強は嫌い。テスト勉強も一夜漬けばかりでしたね。 

そのかわり、本は数えきれないほど読みました。小学生で昆虫図鑑をすみずみまで熟読するのはもちろん、『ファーブル昆虫記』や『シートン動物記』、椋鳩十の小説も読破しました。

蜂に刺された経験が研究を始めるきっかけに

小さい頃から生き物が大好きで、よく動物園や博物館に連れて行ってもらっていたそう。

私が蜂の研究を始めるようになったのは、高校生の頃から。虫採りの最中、スズメバチに頭を刺れ、3日間も熱を出して寝込んだことがきっかけでした。蜂が怖くなったというよりも、スズメバチの持つ毒の強さに感激したんです。それ以来、蜂に関する専門書を読み漁るようになりました。

「昆虫博士」になるには、大学に行かなければいけないと知ったのもその頃です。高3で進路を決める際、蜂について学びたいと考えました。先生には、就職に有利な工学や医療系の学校への進学をすすめられましたが、好きなことをやりたいという気持ちのほうが強かった。そこで、ミツバチ科学研究センターを持つ玉川大学に手紙を送り、蜂の研究に対しての熱意を伝えました。玉川大学に自分の想いが通じて、入学を許可され、本格的に蜂の研究に携わることになりました。ずっと勉強嫌いだった私が、大学に入って初めて目的を見い出し、本気で勉強するようになったわけです。 

両親は、虫ばかりに熱中せず、生涯の友だちを見つけて視野を広げなさいとアドバイスしてくれたので、部活にも励みました。ボランティア系のクラブに入り、赤十字奉仕団として児童養護施設に行って子どもたちと一緒に遊んだりする活動をしていました。

ミツバチの進化を遺伝子レベルで研究

中学校では吹奏楽部に所属。「トロンボーンを担当していました」(高橋氏)。

大学時代から追い続けている研究テーマは、ミツバチの進化のメカニズムを突き止めること。彼らは、人間と同じように集団で生活して社会性に長け、仲間を守るために自分を犠牲にする習性もあります。そんな、昆虫の世界でも珍しい生態を遺伝子レベルで調べ、どのように進化してきたのかを研究しています。 

もうひとつの研究テーマは、ミツバチの新種の開発です。これも遺伝子を調べて、蜜をたくさん集めたり、人を刺さないおとなしい性質の品種をつくろうとしています。実用化できるようになれば、小中高の授業で役立つ教材にすることもできるのです。このほか、数年前に世界規模でミツバチ不足が問題になったため、病気にならないようにする方法を見つけ出すことも課題です。 

実は、ミツバチは農業にも役立っているんです。みんなは、農作物の約7割が、受粉するためにミツバチを利用しているということを知っていますか? 

ミツバチは、世界中でも授粉用昆虫として利用されており、欧米では牛、豚に次ぐ第三の家畜といわれています。しかし、特殊な繁殖生態を持っているため、新しい品種を開発するのは難しいとされてきました。牛や豚などの生産は近代化が進められているのに、日本の養蜂は、なんと2000年前と同じ方法で生産されているんですよ。将来、品種開発を成功させ、ミツバチを安定的に増やすことができれば、日本の食糧問題解消に非常に役立ちます。そればかりか、ほとんど輸入に頼り、現在5%しかないハチミツの自給率を、約50%にまで高めることも可能となります。 

さらに、ミツバチを育てるためには、田んぼの休耕期にレンゲを育てたり、山にミカンやトチ、アカシアなどの木を蜜源植物として植えたりするため、環境問題にも貢献してくれます。 

このように私たちの身近な暮らしに役立つにも関わらず、日本でミツバチを専門に研究する人は少なく、研究施設も、世界と比較すると圧倒的に少ない。たとえば、中国の場合は各省に、アメリカの場合は各州にミツバチの研究施設があると聞いていますが、日本では玉川大学ミツバチ科学研究センターと、京都産業大学ミツバチ産業科学研究センター、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所の3か所しかありません。多くの課題があるからこそ、研究しなければいけないことも山積み。自分の研究に、とてもやりがいを感じています。 

また、私の所属する京都産業大学ミツバチ産業科学研究センターでは、自治体や学校などと連携し、環境保全や環境教育活動、ミツバチをテーマにした街おこしなど、幅広く社会に貢献する活動にも取り組みたいと考えています。

ミツバチブランドの確立と人材の育成が目標

大学生時代、学生赤十字奉仕団で、児童養護施設にボランティアに行った際の一枚。真ん中が高橋氏

私は今、お盆や正月も関係なく、毎日ミツバチと接することができて、とても幸せです。日々の健康状態や機嫌の善し悪しが気になるほど、ミツバチたちが可愛くて仕方ありませんが、自分の経験は、50年以上もミツバチと接している養蜂家の方と比べるとまだまだ浅い。もっと情報を蓄積していきたいと考えています。同時に、養蜂家を志す人を育成し、世界の市場で戦うことのできる、レベルの高い人材を輩出したいとも思います。そして日本のはちみつを、「和牛」のような世界で愛されるブランドにするのが私の夢でもあります。目標を達成するまで、まだまだ道のりは遠いですが、諦めずにチャレンジし続けたい。これまで積み重ねてきた経験で、失敗しても絶対に諦めないことが、とても重要であると学びましたから。 

みんなも、この先「自分がどうなりたいか」をイメージしながら、自分が興味を持ったことにはどんどんチャレンジして欲しいと思います。

私はこれまで野球やサッカーなどさまざまなことに興味を持って取り組んだ結果、グルッとひと回りして、もともと好きだった「昆虫」の世界で本当に自分のやりたいことを見つけることができました。自分が興味のあることにチャレンジすることができたのは、両親のおかげだと思います。母親にはよく叱られましたが、私が昆虫に熱中することに関しては黙って見守ってくれましたし、父親も、「友だちをたくさんつくれ」としか言わなかった。あれこれ指示することなく、のびのびと育ててくれたことに、心から感謝しています。
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