先進国の中で最も低いと言われる、日本の食料自給率。農業就業者の高齢化も進んでいることから、将来的には人材の減少も懸念されています。そんな中、農作物を安定して栽培・供給する方法として期待されているのが植物工場です。植物工場とは、植物に与える光や水、気温などを人工的に管理した環境下で、野菜などを生産する施設のこと。工学的な観点から研究に取り組んでいる清水浩先生は、「植物工場の技術は、世界の中で日本がリードしている」と話します。

「植物工場で作られた野菜は、安定した価格で供給することが可能な上、無農薬なので調理前に水で洗う必要もありません。現在は、外食産業でよく利用されていて、今後は医薬品への応用も期待されています」

成長分野として注目が集まる植物工場での栽培方法は、温室栽培とは似て非なるものです。

「たとえば、ビニールハウスを使えば、ハウス内の気温を調整したり、雨や風を防ぐことができます。しかし、太陽光の当て方まで調整することはできません。その点、植物工場では人工的な光源を利用するため、植物に当てる光をコントロールできます。さらに、太陽光だと上から一直線の光しか植物には当たりませんが、人工の光であれば点滅させたり、植物の横や下から光を当てることも可能です」

ただ、電気を利用するため、生産コストが増すという弱点も。さらに、植物工場で利用される光源が、蛍光灯である点も課題のひとつでした。

「もともと蛍光灯は、人間が使用することを目的に開発されたもの。そのため、その光は必ずしも植物の栽培に適していません。また、植物に吸収されなかった光は最終的には熱となり、植物工場内の熱負荷が増加します。これを除去するために、新たなエネルギーを投入しなければなりません」

このようなコストがかさむと、露地栽培の野菜よりも割高になる場合もあります。

「この課題を解決し、植物工場の採算性を高めるのが、私たちの目標です。私の研究室では、技術的な側面から、植物工場で使用する光源や光環境について研究しています」

具体的な取り組みのひとつが、植物の栽培に適した光源の開発です。清水先生は「成功のカギを握るのは光の波長」だと話します。

「人間の目に一番よく見えるのは、555ナノメートルという波長の緑色の光です。ただし、多くの植物は元々緑色です。それというのも、緑色の光を反射しているからです。つまり、緑色の光を植物に当てても、光を反射してしまうので無駄が生じます。植物の光合成に有効なのは、青と赤の2色の光。この光の波長は約450と660ナノメートルで、植物の成長にも大きな影響を与えます」

清水先生の研究室では、人工的に作り出した光を用いて、さまざまな種類の野菜を栽培しています。

「一般的な植物工場では栽培期間が短く、電気代も抑えられるため、栽培する植物はレタスなどの葉物野菜がほとんどです。ただ、食料供給に貢献することを目指すのであれば、限られた野菜だけを栽培するのは、あまり実用的とは言えません。私の研究室では学生たちとジャガイモやダイコン、ピーマン、キュウリなどを栽培したことがあります。今後は、さまざまな野菜の栽培期間を短縮させるための光環境を見つけることも、課題のひとつです」

植物工場が抱える課題の解決に日夜取り組む清水先生は、研究の醍醐味を次のように語ります。

「"この環境下で、この刺激を与えると、植物はどう反応するか""その結果をどう生産に生かすか"など、課題の解決方法をひとつずつ追究していくことが、とてもおもしろい。学生にも自分が夢中になれる仕事に就いてもらいたいと思います。社会で働くようになれば、1日の大半は仕事に費やします。その時間が楽しくて仕方がないと感じられるようになれば、人生はとても充実したものになることでしょう」

京都大学大学院農学研究科
地域環境学専攻
清水 浩教授
清水 浩 教授

京都大学大学院農学研究科修士課程修了。
茨城大学農学部助教授、ミシガン州立大学客員研究員
などを経て、現職。

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