第30回
子どもの心も脳も喜ぶ"声かけ"

声かけは"もろ刃の剣"正しい声かけとは?

声かけは、親ができるサポートの最たるもの。子どもに勇気ややる気を与え、力を引き出すことができます。しかし一方で、よかれと思ってした声かけが、子どものモチベーションをそぎ、ふて腐れさせたり、精神的に追い詰めたりすることもあります。

小学生ぐらいの子どもは、よくも悪くも親の影響を大きく受けるため、声かけも"もろ刃の剣"となることがあります。親は子どもの心を傷つけず、受験に立ち向かう武器となる声かけをしなければいけません。

では、受験期の小学生にとっての正しい声かけとはどのようなものか、脳の仕組みから考えれば、その答えが見えてきます。

まず知っておきたいのは、脳の自己報酬神経群についてです。7歳を過ぎた頃から、子どもは「自分で決めたことを自分で達成したい」という気持ちが強くなってきます。これは自己報酬神経群が活発になってきた証拠。この神経群は、自分でやろうと思ったことを成し遂げたときに味わう達成感を"報酬"として、思考力や記憶力を高める働きをします。自己報酬神経群は、脳の機能を高める上でも重要な役割を握っており、この神経群を活かすような声かけをすることで、脳全体の働きがよくなり、やる気や集中力もアップします。

子どもの迷いや停滞は「いい質問」で解消

では、具体的にどのような声かけをすればよいでしょう。声かけの基本とも言えるのが「褒めること」。特に子どもが自分でプランを立て、そのノルマをこなしたときなど、「自分で決めたことを達成したとき」に惜しみなく褒めると、子どもの自尊心が刺激され、自己報酬神経がさらに活発化してモチベーションにつながります。

また、子どもが迷っていたり、やることを決めかねていたりする場合には、「二者択一」の質問をするといいでしょう。「新しく○○をやるのと、××を復習するの、どっちがいい?」などと問いかけます。大切なのは、子どもの口から「私はこうする」という言葉を言わせること。それが自己報酬神経を働かせるためのポイントです。

では子どもがすべきことをしない時は、やはり「叱る」しかないのでしょうか。いえ、叱る代わりに「いい質問をする」ことで、やる気を起こさせ、正しい方向に導くことができます。

宿題が終わっていないのに、だらだらしている我が子。連日の勉強で疲れているのは重々わかっていたとしても、その姿に親はやはりいらだってしまうでしょう。しかしここで「宿題をやりなさい!」と命令口調ではいけません。たとえ子どもがその通りにやったとしても、自己報酬神経は働かないからです。この場合の正解は「そう言えば宿題もう終わった?」とさりげなく聞いてあげること。子どもだって宿題をしなければいけないことはわかっていますから、自発的に机に向かうきっかけとなる声かけがあればいいのです。

頭ごなしに否定はせず"オウム返し"の肯定から

声かけのもうひとつのポイントが、脳が持つ「自己保存の本能」を過剰反応させないということです。子ども時代は特に自己保存の本能が働きやすく、親の言葉であっても激しい怒りや批判の矛先が自分に向けば、子どもは自分の心を守ろうと、嘘やごまかしでその場をしのごうとします。これは脳の成長にとって悪影響。癖になってしまっては大変です。

たとえ明らかに子どもに非があることでも、頭ごなしに否定してはいけません。

たとえば約束の時間を過ぎてもゲームをやり続けているとき。「約束でしょう!」と正論を言って止めさせることはできるでしょう。しかしまずは、なぜゲームを続けてしまったのかを聞きます。「だって、いいところだったから」と子どもが答えたら、それを受けてのひと言が肝心です。「そうだね、いいところでは止めづらいね」と、あえて子どもが使った言葉で肯定するのです。その後にあらためて「でもね、ゲームをやる前の約束では……」と子どもが「自分が間違っていた」と納得するように説明してあげます。子どもの言葉を"オウム返し"して肯定から入ることで、自己保存の本能が過剰に働くことを防げます。

このような正しい声かけの積み重ねが、子どもの脳を育む力となっていくでしょう。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一

お悩み相談室
塾でもらうプリント類を上手く整理できず、見直しが十...
四谷大塚をはじめとした進学塾では、さまざまなプリントを子どもに配ります。たとえば、授業内容を補助する...>>続きを読む
お悩み相談室
うちの夫は、受験に対して非協力的です。少しでも協力...
受験生の子どもをサポートする親には、さまざまな役割が求められます。子どもの学習計画を考えたり、学習態...>>続きを読む
サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。