「変わり者と呼ばれてもおもしろい研究を追求したい」

高橋淑子氏(京都大学大学院理学研究科 教授)

夢をかなえるために大事なこと3つ

自然と戯れたおてんばな女の子

小学生のときは、とてもおてんばな子どもだったんですよ。下校のチャイムが鳴っても校庭で遊んでいて、先生によく叱られました。活発なだけでなく、負けん気も強かったので、兄や兄の友達、同級生の男の子とも取っ組み合いのケンカをしょっちゅうしていました(笑)。

その一方で、勉強も大好きでした。知らないことを理解するのが楽しくて仕方がなかった。学校の勉強だけでなく、いろいろなお稽古もやりたくて、親に泣きついて頼んだこともあります。両親は「あれもやりたい」「これもやりたい」という私の希望を、全部通してくれました。放課後は学校で遊んで、その後ピアノやマンドリン、そろばん、習字など、毎日何かしらの教室に通っていたので、とても忙しい子どもでした。

また、私は広島市で生まれ育ったのですが、夏休みや冬休みなど長期休暇には、祖父母の住む田舎で過ごしました。田舎では、まさにのびのびと野山をかけめぐる毎日。虫を獲ったり、草花を摘んだり。あぜ道を自転車で勢いよく駆け抜けて、田んぼにはまって泥んこになったこともありました(笑)。

そんな好奇心旺盛な私が、もうひとつ好きだったのは、祖父の後ろをついて回ること。祖父は定年退職後、畑仕事をしながら隠居生活を送っていたので、農作業をしながら私にいろいろ教えてくれました。たとえば、藁は「こうやって干すと虫が寄りつかない」「こうするとよく陽が当たる」などと、一つひとつ教えてくれるんです。その全部が不思議で「こうした方がもっと陽が当たるんじゃないの?」と、生意気にも祖父に意見していたそうです。そんな田舎での生活は、自然の営みを覚える貴重な体験だったといえます。

勉強、部活、学校行事を楽しんだ中高時代

バイオサイエンス分野における研究者の講演会にて。

中学校は、中高一貫のノートルダム清心学園に入学しました。宿題がとても多くて、毎日夜遅くまで必死に取り組みました。私の母親は「勉強しなさい」と言いわない代わりに、「早く寝なさい」と心配していました。それでもさまざまなことを理解できるのがおもしろくて、机に向かうことも苦にならなかった。特に英語、数学、物理、化学が得意でしたね。勉強以外にも、音楽部の部長としてメンバーを仕切ったり、体育祭などの学校行事で活躍したりと、学校生活を思う存分楽しみました。

生物学を専攻するきっかけとなったのは、高校生のとき。生物の授業を聞いていて、“ビビビッ”と体に電気が走るようなショックを受けました。「これはおもしろい!」と、直観的に思ったんです。

人生を変えた生物学との出会い

フランス国立科学センター(CNRS)発生生物学研究所の所長のニコル・ルドワラン先生と撮影した一枚。

高校卒業後は、生物学を学びたいと思い、広島大学へ進学。ところが、ワンダーフォーゲル部に入って、山登りに夢中になってしまったんです。山に入ると、人間がいかにちっぽけな存在であるかを気づかされました。「自然相手では、どうにもならないときがある」という畏敬の念に打たれたんです。油断すると、遭難して死んでしまう危険もありますからね。特に私は、雪山のパーティーに参加して、何度も「死ぬかもしれない」と思ったことがあります。

そうやって山登りにのめりこみながらも、生物学をもっと研究したいという思いもあって、独学で京都大学大学院に進みました。当時は大学院に進む人自体が少なく、しかも「女性が研究者になるなんて」と、異端児扱いされるような時代だったんですよ。そんな評価を気にすることなく研究に励み、ますます世界が広がりました。大学院を修了した後、フランスへ留学し、それからさらにアメリカへ留学しました。

研究者としての資質は疑問を持つこと

学部生時代、体育会ワンダーフォーゲル部で北海道・大雪山に登ったときの記念写真。「山登りに夢中でした」(高橋氏)

生き物は、人類の英知を超えたものを見せてくれます。自然界に起こる現象は、想像を絶することが多く、ときには、自然からピシャリと平手打ちを食らうこともあります。それでも私は、「見たい、知りたい」という好奇心を抑えきれず、研究を続けるわけです。打たれ強くないと研究を続けられないですし、「何かおもしろいことを発見してやる!」という意気込みも必要です。そんなド根性は、自然と戯むれるうちに身につけたのだと思います。

私の専門分野は、発生生物学です。これは、1つの卵がさまざまに変化して、体の組織や体が作られていく仕組みを調べる学問です。

卵の細胞が2つから4つ、4つから8つと分裂を繰り返し、あるときオタマジャクシになったり、鳥ならば羽が生えてきたりします。自然界では当たり前の現象ですが、私は「なぜだろう?」という疑問を持った。そして、細胞の動きや遺伝子のシステムに注目して、「動物の発生における形作り」をテーマに調べました。その成果が認められ、2010年には、女性研究者に贈られる猿橋賞を受賞することができました。

自然を敬い、ありのままの自分を受け入れよう

私は、好きなことを続けてきた結果、今に至るので、自分が特別な人間だと思ったことは一度もありません。

ただ、研究者として自信を持って言えるのは、人と違うことを率先してやってきたということです。子どもの頃から「みんながやっているから、こうしなさい」といわれるのがとてもイヤでした。そんな性格が、今の私を形作っているのではないかと思います。

そもそも研究とは、みんながやっていないことに挑戦し、新しい発見をすることに意味があると思おもうのです。みんなと同じことをしないと不安になるようでは、独創的な仕事はできません。人と違うことをすると、孤独に絶えなければいけないときもあるし、イヤな思いをすることもあるかもしれません。だから私は「変だと思われても気にしないで」と、あえて言いたいですね。イヤなことがあっても、すぐに忘れて気持ちを切り替えていきましょう。

人から変わり者扱いされても、「それがどうした」というくらいの強さを持ってほしいと思います。そして、誰が何と言おうと、これだと思ったことはやり遂げる意志を持つこと。もちろん、物事を成し遂げるためには体力も大事です。

みんなも、強さを身につけるために、自然の中でたくさん遊んで、勉強も一生懸命取り組んでください。そして将来、活躍の場を世界レベルに広げるためにも、英語力を身につけるのは必要不可欠です。私も、学生たちには「好き嫌いにかかわらず英語を習得しよう」と指導しています。

今のみんなには、何でも吸収していく能力があります。テストの点数だけにとらわれることなく、いろいろなことにチャレンジしてくださいね。

両親は、私が物事を学ぶことを助けてくれた存在。「ああしろ、こうしろ」とレールを敷くことなく、好きなことをやらせてくれました。失敗しても、温かく見守ってくれていたことにとても感謝しています。人間は、失敗して挫折していく中から、多くのことを学びます。子どもが失敗したとき、そこから学ぶ過程を邪魔しないことが、大事なことだと思います。最近では、ちょっと注意されただけでもへこんでしまう若者が多いといいます。そうならないためにも、子どもは放っておくくらいがいいのではないかと思います。
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