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リビングに子どもの"マイゾーン"を作る
小学校高学年になると、脳は大人とほとんど同じレベルにまで成長しています。思考力、記憶力、理解力が揃い、学習能力がぐんと上がるときです。
この時期に受験勉強をすることは、脳を鍛える上でも効果的です。しかし、やり方を間違ってしまうと、一生勉強嫌いになってしまう怖れもあります。そこで今回は、脳をきちんと育てるための勉強法についてお話したいと思います。
まず考えたいのは、環境です。
この年齢になると、多くの子どもは勉強中に親の姿が見えなくとも、不安にならずに勉強できるようになってきます。そこで子どもに与えてあげたいのは"マイゾーン"。深く集中できる自分だけの場所を設けてあげると、勉強に没頭しやすくなります。
とは言え、子ども部屋だと親の目が届かないため、親の方が不安になってしまうという家庭もあるでしょう。そこでおすすめは、リビングに子ども専用のスペースを作ってあげることです。勉強机を置き、本棚などでリビングと隔離した空間を演出してあげるといいですね。"マイゾーン"で子どもが集中しているときは、親は何も言わずに見守りましょう。集中力が途切れたなと思ったときにも、叱ったりしてはいけません。「おつかれさま、がんばっているね」など、気分転換になるようなポジティブな声かけをしてあげましょう。
毎日の復習から思考力が生まれる
10歳から、脳は思考力が鍛えられる時期に入ります。
思考力は、生涯ずっと鍛え続けていかなければいけないものであり、頭のいい人間になるための必須の能力。受験勉強を利用して、しっかり鍛えたいところです。
思考力を鍛えるために重要なのは、繰り返し考えるということ。勉強で言えば、復習が大切です。
脳にとって悪い習慣のひとつは「だいたいわかった」で学習をやめてしまうことです。「だいたいわかった」と思った時点で、脳は自己報酬神経群を働かすことを止め、もうこのことは考えなくてよい、と判断します。それが習慣になってしまうと、何事にも中途半端な力しか出せないようになってしまうのです。「簡単だからもうわかっている」と思うことでも、繰り返し考えると、実はわかっていない部分があることに気づいたり、新しい発見があったりします。同じことを繰り返し考えることで、より高度な知性や理性が形成され、思考力や想像力が培われていきます。
具体的には、今日習ったこと、覚えたことは、その日のうちにしっかり復習。さらに夜寝る前に、学習内容を声に出して自分に説明するようにすれば、空間認知能という能力も鍛えられて一石二鳥です。親のサポートとしては、「今日はどんなことを勉強したの?」と質問し、子どもの頭の整理の手助けをしてあげるといいですね。
"ぶっちぎり合格"を目標に勉強しよう
子どもが勉強に行き詰っている様子だったら、確実に解けるような簡単な問題をたくさん解かせるといいでしょう。気分転換にもなりますし、正解をいくつも出すことで脳に成功のパターンが刻まれ、モチベーションも上がります。
脳を鍛える勉強法の最終目標は、「ぶっちぎりで勝つこと」です。「合格点を取る」ということを目標にしているうちは、脳の本当の力はあまり発揮できません。たとえばテストでは、志望校に対する合格可能性が明示されますが、たとえ合格可能性が80パーセント以上だったとしても満足してはいけません。100パーセントにどこまで近づけるか、どうやったらぶっちぎりで合格できるかということを考え、勝ち方にこだわることが大切です。
ぶっちぎりで合格するために、目の前の問題を完璧に理解してやろう、納得できるまで何度でも考えてやろう。こういった姿勢でいることが大切です。そういった姿勢が脳の力を最大限引き出し、また思考力を鍛える習慣にもなります。そしてこの思考力を鍛える習慣こそ、人生を通して有益に働く大切なもの。受験勉強を通して、しっかり身につけておきたいところです。

1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。
取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一
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