第14回

『くちびるに歌を』

中田永一【著】
11年11月刊/小学館/1,575円
Amazonで購入

『コロヨシ!!』

三崎亜記【著】
10年刊/角川書店/1,680円
Amazonで購入

国家的競技・掃除を軸にした奇想天外な設定がおもしろい、熱血スポーツ小説。「コロヨシ」とは「頃良し」のことで、作中では掃除開始時の掛け声として使われる。

『ぼくは落ち着きがない』

長嶋有【著】
11年刊/光文社/500円
Amazonで購入

図書部を舞台に描かれる、高校生たちの恋と友情、人生に関する悩み―。コラムニストや俳人としても活躍する芥川賞作家が、ゆるやかに綴る青春ストーリーだ。


卒業式、入学式の季節ですね。子どもたちの門出を祝う時期にぜひ読んでいただきたい本があります。中田永一の『くちびるに歌を』。本屋大賞にもノミネートされている青春小説です。

長崎県の五島列島にある中学校に、臨時の音楽教師としてやって来た柏木先生が、合唱部の顧問になるところから物語は始まります。美人教師を目当てに、それまでいなかった男子部員が入ってくる。にわかに騒がしくなった合唱部が、NHK全国学校コンクールの地区大会に出場するまでを、2人の部員の視点で描いていくのです。

愛人をつくって出ていった父のせいで男嫌いになってしまったナズナと、友達がひとりもおらず教室では空気扱いされているサトル。しかもサトルには自閉症の兄がいて、毎日つとめ先の工場まで送り迎えをしていますが、そのことを誰にも言っていません。兄は自分を必要としてくれるし、送迎は苦じゃないけれど、父に言うなと止められているから。まだ中学生なのに、彼の日常は諦念に満たされています。それがなりゆきで始めた部活によってどう変わっていくか、というのがひとつの大きな読みどころ。

柏木先生は「手紙」という課題曲に対する理解を深めるために、15年後の自分宛に手紙を書くことをすすめます。書いても提出はしなくていいと付け加えるところがすばらしい。どんなに慕っている先生であっても、大人に見られるとしたら、書く内容は変わってしまう。そのことを著者はよく知っているのです。そして終盤、サトルの手紙を読んだとき、目頭が熱くなります。友達がいないことを「ぼっちのプロ」などと自虐的なユーモアでくるみつつ冷静に語っていたサトルが、いかに今を苦しんで生きていたかというのが伝わってきて切ないんです。

あと2冊は変わり種の小説を紹介します。三崎亜記の『コロヨシ!!』は、なんと掃除が日本古来のスポーツになっている世界が舞台で、高校の掃除部に所属する男の子が主人公。設定が細かく、この世には存在しない部活なのにリアリティがあるんですね。

長嶋有の『ぼくは落ち着きがない』は、高校の図書部の話。図書室の運営を、部活としてやっているところがおもしろい。みんなと一緒に部室にたむろしているだけで楽しかった頃のことを思い出します。

イラスト/水上多摩江 写真/アーク・フォト・ワークス(清水亮一)

今月の新刊案内
深まる秋を彩る秀逸な物語たち
児童文学のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した上橋菜穂子さん。大人も夢中にさせる...>>続きを読む
今月の新刊案内
仕事について考えてみる秋
「子どもには世界を視野に入れて夢を追ってほしい」と考えているお父さんお母さんに、ぜひ読んでいただきた...>>続きを読む
サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。