「46億年前に誕生した地球や惑星の謎に挑む」

小久保英一郎氏(国立天文台 理論研究部 准教授)

夢をかなえるために大事なこと3つ

野山や川で育くんだ自然科学に対する興味

自然に恵まれたところで生まれ育ったので、小さい頃から、遊び場はいつも山や川でした。カブトムシやクワガタのいる木を見つけては虫採りに夢中になったり、川に行けば魚を捕かまえて遊んでいる毎日でした。僕にとっては本当に楽しい思い出です。生き物が大好きになって自然科学への関心がふくらんでいったのも、その頃の体験のおかげだと思います。だから、今の子どもたちがザリガニの持ち方を知らないなんて話を聞くと、ちょっと残念な気分になりますね。

それから、家の近くには遺跡もあったんです。大人たちが発掘を済ませて積み上げてある土は、僕たち子どもが自由にしてよいということになっていましたから、遺跡発掘のまねごともずいぶんやりました。そこから出てきた矢じりなんかも、たくさん家に持って帰りました。当時集めたものは、宝物として今も実家に置いてあります。

遺跡発掘体験から、遺跡に関する本を熱心に読むようになりました。学校の勉強を家ですることはまったくありませんでしたが(笑)、好きなことについては難かしい本も気にせず読んでいたせいか、授業についていけないということはなかったですね。

テレビで、世界の秘境を探検して、未知の生物を探すといった番組が流行っていた時代でもありました。自然の中に身を置くのが大好きだった僕は、探検家や考古学者に憧れていました。

中学ではバレーボール部に所属して部活動に打ち込む一方で、電子工作にも熱中しましたね。部品を買ってきて、ラジオや簡単な電子ゲームを組み立てるんです。アマチュア無線の資格も手に入れたりしました。コンピュータに対する興味が大きくなったのもこの頃です。そんなわけで、中学生になっても、学校の勉強のほうは、ほとんどしなかったですね(笑)。

山に登り海に潜って地球への思いを深める

大学院生時代、ペルーのマチュピチュで撮影。昔からインカの遺跡を見るのが憧れだったそう。

僕はどうしても自然から離れられないところがあって、高校では山岳部に入りました。山を歩くのは気持ちのよいものですが、一歩一歩斜面を登って山頂にたどりつくまでには、苦しいときもあります。それでも、頂上にたどりついた瞬間の達成感と爽快感は、実際に身体を動かして経験した者にしか味わえないものです。今でも、身体と頭両方を使っているほうが研究が進みます。子どものうちから思いきり身体を動かす習慣をつけておくことを、みんなにもおすすめしたいですね。

大学進学の時期が迫ってきたとき、自分はどの進路を選べばいいのかわかりませんでした。それで、入学する時点では、学部や学科を決めなくてよい制度がある東京大学にしようと考えたんです。とくに成績がよかったわけではないので、先生には「無理だからほかのところにしなさい」と反対されました。それでも、「もっと知識と経験を積んでから将来のことを考えたい」という思いから、一年の浪人生活を経て、東大に入学しました。

大学で勉強を進めるうちに、天文学用のコンピュータを製作している研究室があるのを知りました。コンピュータに興味があったこともあって、その研究室に入ったんです。結局、それが現在の仕事につながる選択となりました。

大学で、海洋調査探検部というサークルに所属して、ダイビングを通して海に親しんだことも、今の研究につながっていますね。ダイビングで経験を積むうちにアルバイトも始めて、インストラクターや潜水士の資格も取りました。

海があることは、地球という惑星の大きな特徴です。自分自身も海に行くことで、私たちの惑星についてさらに考えるようになりました。そういった理由もあって、地球の研究をするようになったんです。

謎を解き明かす喜びが天文学の未来を拓く

オーストラリアのグレートバリアリーフ沖の珊瑚海で、ダイビングクルーズをしたときの一枚。

みんなの多くは、天文学者と聞くと、大きな天体望遠鏡を毎晩のぞいている人を想像するかもしれませんね。たしかに、天文学の研究にはそういう部分もありますが、それだけではないんですよ。僕の研究室には天体望遠鏡はありません。机の上にコンピュータが置いてあるだけです。

天文学の研究対象である宇宙は、あまりにも大きくて、実際に人間が宇宙に出て行って調べて帰ってくるということはできません。そのため、物理や化学のように、実験を行なって疑問に対する答えをはっきりと導き出すのが不可能な学問分野なのです。

そこで、実際に観測ができないことに関しては、コンピュータを使ったシミュレーション(模擬実験)という手法で研究を進めます。つまり、さまざまな計算をコンピュータにさせて、かつて宇宙でどのようなことが起こっていたのか、実験的に調べていくのです。

たとえば、これまでの研究によって、約46億年前に月ができたときは、たったひと月ほどでできあがったことがわかりました。また、地球ができたときの過程を研究した結果、地球とよく似た惑星が、銀河系の中におよそ1億個ある可能性が出てきたんです。

僕が子どもの頃には、地球そっくりの星が銀河系に1億もあるなんて、誰も思ってもいなかったはずです。科学のおもしろいところは、これまではわからなかった謎が解明されたり、新たな発見によって、それまで常識だと思われていたことがくつがえったりする点ではないでしょうか。みんなも、「なぜなんだろう?」と思うと、その答えを知りたくなりますよね。そして、不思議に思っていたことの答えが見つかると、とってもうれしいはずです。

自分の力で謎を解く喜びと、また新たな謎を見つける楽しさを感じられるのだから、こんなにすばらしい仕事はないと、僕は心から思っています。

自分の興味の在りかを知ることの大切さ

原始惑星の軌道を示したもの。数十個あった原始惑星は、衝突を繰り返し地球型惑星になっていった

先ほども言ったように、僕は子どもの頃に探検家に憧れて、考古学者になりたいと思いました。地球の誕生を解明する今の仕事も、ある意味で考古学者と同じ仕事と言えます。自然に囲まれて地球を好きになり、遺跡に遊びに行った体験から考古学に興味を持った。子どもの頃からずっと、好きなことに正直でいたからこそ、僕は自分がやりたい仕事ができているんです。

だからみんなも、自分は何が好きで、どういう人間なのかを自ら知ることが大切だと思います。そのために、人の言っていることをそのまま信じるだけでなく、身体を使って、自分自身で何事もどんどん体験してください。

探検記、遺跡に関する書物、自分で組み立てる付録のついた科学雑誌……。僕が読みたいと思った本はどんなものでも買ってくれました。子どもが読むには少し難しいものでも「まだ早い」と言われたことはありません。ほかのことに関しても、いつも「自分の好きなことをしなさい」という言葉をかけてくれました。そのおかげで、僕は自分が本当にしたい仕事に就けました。ですから、親は子どもに「これをしなさい」「こうなりなさい」と口を出さないほうがよいのではないでしょうか。
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