第13回

『春待ち海岸カルナヴァル』

木村紅美【著】
11年12月刊/新潮社/ 1,575円
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『人生オークション』

原田ひ香【著】
11年10月刊/講談社/ 1,470円
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主人公の「私」と「りり子」叔母さん。年の離れたわけあり女性2人が、いらない荷物をオークションにかけてゆくーー。すばる文学賞作家が描く、穏やかな物語。

『夢違』

恩田陸【著】
11年11月刊/角川書店/ 1,890円
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学校で立て続けに起こる、集団白昼夢。「夢判断」を行う主人公は、夢の解析に挑む。著者2年ぶりの新作は、近未来を舞台にした、幻想的なサスペンスだ。


主人公の紫麻が、父に聞いたジャズ葬の話を思い出すところから、木村紅美の『春待ち海岸カルナヴァル』は始まります。ニューオリンズでは、ミュージシャンが亡くなると「聖者の行進」をみんなで演奏しながら踊り歩く。かつてのジャズ仲間の演奏によって、急死した父は見送られます。みんながお洒落をして、トランペットの音に耳を傾ける。悲しくも光にあふれたジャズ葬のシーンは印象的です。

タイトルの「カルナヴァル」は、亡き父がオーナーをつとめていたホテルの名前。体調を崩した母にかわって、39歳の紫麻と3歳年下の妹・杏里がホテルを切り盛りすることになります。真面目でおとなしく友だちも恋人もいない紫麻と、恋多きシングルマザーの杏里、妖精の存在を信じている杏里の娘・メイ。3人とさまざまな人たちの交流、ホテル・カルナヴァルの四季が丁寧に描かれていきます。

本書の魅力は、まずホテル・カルナヴァルに行ってみたくなるところ。〈海まで徒歩一分、朝食はバスケットに入れてドアのまえまでお持ちします。ベッドでも浜辺でも、どこでも、お好きな場所でめしあがっていただくためです。奇跡的なロマンスの芽生えるホテルでもあります。〉常連客の結婚披露宴で、紫麻はそんなスピーチをします。このバスケットに入っているサンドイッチがとてもおいしそう! 

もうひとつの読みどころは、その結婚式で出会った建築家の茅野さんと紫麻の恋の行方です。ふたりの関係はゆっくりしか進みません。傍から見ていると、もどかしくなるほど。でも作者の文章は、彼女を急かすことなく、春の日差しのようなあたたかさで見守ります。死から始まって再生の予感を描くラストシーンまで、読み終わるとホッとする1冊です。

春といえば引っ越しシーズンでもあります。原田ひ香の『人生オークション』は、離婚してひとり暮らしを始めた叔母と、就職活動がうまくいかずフリーターになった姪が、過去の厄介な荷物を手放していく「断捨離」小説。

直木賞候補にノミネートされた恩田陸の『夢違』は、夢を記録できるようになった近未来の物語です。子どもたちが集団失踪したり、怖い部分もありますが、春を待ち続けるヒロインの純愛と、繰り返しあらわれる吉野の桜が、美しい余韻を残します。

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