第11回

『水の柩』

道尾秀介【著】
11年10月刊/講談社/ 1,575円
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『忘れられた花園< 上 >< 下 >』

ケイト・モートン【著】、青木純子【訳】
11年2月刊/東京創元社/各1,785円
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港に取り残された名前もわからない少女を、ある夫婦がネルと名づけて育て上げた。そして月日が経ち、ネルは、孫娘に自身の秘密を遺してこの世を去る──。

『ローラ・フェイとの最後の会話』

トマス・H・クック【著】、村松潔【訳】
11年10月刊/早川書房/ 1,785円
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歴史学者の主人公が、講演のために訪れた地で、思いもよらない人物に再会し、自身の過去を覆すような事実を聞かされる。ミステリ界の名手が描く、心理サスペンス。


まずは道尾秀介の『水の柩』。主人公は、温泉町に住む中学二年生の逸夫です。老舗旅館の息子で、成績も容姿も可もなく不可もない。そんな逸夫の悩みは、自分があまりにも「普通」であること。逸夫は文化祭をきっかけに同級生の敦子と言葉を交わすようになります。よその町から来た敦子は、母と妹と三人暮らし。家は貧しく、学校ではいじめられていています。彼女は、小学校の卒業式の日に埋めたタイムカプセルの中に入っている、二十年後の自分に宛てた手紙を取り替えたいというのですが……。

やがて逸夫は、敦子がついていた悲しい嘘と、「普通」だと思っていた自分の家族の秘密を知ります。タイトルの「水の柩」とは、町を流れる川の上流にあるダム湖のこと。なぜその湖が「柩」なのか、何が葬られているのか。読み進めるにしたがって、耐えられないほどつらい過去を乗り越えて生きていくにはどうしたらいいのか、考えずにはいられません。最後は「ぜんぶ忘れて、今日が一日目って気持ちでやりなおすの」という登場人物の台詞と共に、心の中にたまった澱おりが浄化されるような小説です。

ケイト・モートンの『忘れられた花園』も、記憶をめぐる物語。港にひとり残された、正体不明の少女の来歴をたどるうちに、驚くべきドラマが発掘されるのです。少女の身元を探す手がかりになる童話も魅力的。「自分はほんとうはこの家の子じゃないのかもしれない」という夢想にふけっていた子ども時代を思い出します。

道尾秀介が帯にコメントを寄せている、トマス・H・クックの『ローラ・フェイとの最後の会話』は、「いい小説を読んだなあ」としみじみする一冊。偉大な本を書きたいという夢を持ちながら、ままならない歴史学者が、自分の家族に悲劇をもたらした女性、ローラ・フェイと再会します。彼女が昔話をしながら言う言葉がすばらしい。「気が滅入ることもあるけど、ほんとうは、人は過去のことを考えるべきなのよ。さもなければ消えてしまうだけだもの。人生のすべてが」。

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