脳の神経回路の動きから記憶のメカニズムを解明

松木則夫先生の専門分野は、"薬を理解する学問"である、薬理学。中でも、てんかんやうつ病など、脳の働きの異常によって起きる病気に効く、薬の研究・開発が主な目的です。

「現在は、薬の開発の一段階前を研究しています。動物が物事を記憶する際に、脳がどのように動いているのか、ストレスがその脳の動きにどんな影響を与えるのか、といったことを探っています。こうした脳の機能のメカニズムは、まだわからないことが多くあります。まずはそれを解明しないと、薬の作りようがありませんからね」

では実際に、どのように脳のメカニズムを解明しているのでしょうか。

「人間の脳を研究に使うことはできませんから、小動物で研究をしています。研究室の学生たちは、まず、マウスの脳の働きを特殊な装置で観察し、脳細胞の反応の記録を取っていきます。顕微鏡はパソコンにつないであるので、脳細胞の反応を動画で見ることも、データを蓄積することもできます。その後、収集したデータを分析するといった流れです」

パソコンのモニター上には、脳内で神経回路が作られていく様子が、動画で示されます。この脳の神経回路の働きこそが、記憶という脳の機能を解明するカギとなるそうです。

原理原則を手がかりに何が正解かを類推する

研究室では、日々、専門性の高い実験が行われています。松木先生に、その一例を解説していただきました。

「マウスに、ある課題をふたつ与え、課題を与える前と後で、脳の神経回路がどう変わったかを調べます。すると、ある遺伝子の神経細胞内の場所が移動することから、その課題で働いた神経回路がわかるのです」

つまり、実験で確認された神経細胞の変化とは、マウスが与えられた課題を「記憶した」ことによって生じたもの。この変化を足がかりにして、さまざまな条件下で実験を行い、脳の記憶のメカニズムを探っていきます。ほかには、人間のてんかん患者の脳を調べ、てんかんの発生する仕組みを明らかにするといった実験も行われています。

「学生には、物理をきちんと学んでおいてほしいですね。物理は数字やデータを元に原理・原則から正解を導く学問。私の研究室で行っているのは、薬理学の生物実験で、何が正解なのかわからないことばかりですが、だからこそ、原理原則から正解を類推して、それを検証していく姿勢が求められます」

研究を続けていく中で、困難な壁にぶち当たったときに、研究者の真価が問われるとのこと。

「大学院で行う研究というのは、未知の領域に足を踏み入れることになります。実験が思うようにいかない、新しい発見ができない、などというのは、よくあることです。そんなときに、いかに自分を奮起させ、研究へのモチベーションを維持できるか。それが研究者にとって重要ですね」

東京大学大学院 薬学系研究科
薬品作用学教室
松木則夫教授
松木則夫教授

東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。
アメリカ留学などを経て、1997年より現職。
教育目標は、世界に通用する薬理学者を輩出すること。
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