第7回

『逃避めし』

吉田戦車【著】
11年7月刊/イースト・プレス/1,460円
Amazonで購入

『トロイメライ』

池上永一【著】
10年8月刊/角川書店/1,575円
Amazonで購入

新米の岡っ引きの活躍を通して、那覇に暮らす庶民の姿を活き活きと描く、エンターテインメント作品。ドラマ化も決定した著者の作品『テンペスト』の外伝的小説だ。

『高校生レストラン、行列の理由。』

村林新吾【著】
10年2月刊/早川書房/ 4,935円
Amazonで購入

こちらも、ドラマ化されたノンフィクション作品の続編。高校生が調理を担当するレストランの奮闘を描いた本作には、「食育」や「地産地消」のヒントが詰まっている。


 親が、自分の食べたいものを優先して作るのは難しいですが、吉田戦車の『逃避めし』を読むと、作りたくなってきます。名作『伝染るんです。』で知られる漫画家が、締め切り直前になぜか仕事場で作ってしまう料理について書いたエッセイ集です。

 学生時代、テストの前になると、急に部屋を掃除したくなりませんでしたか? ほかにするべきことがあるとき、家事は義務感から解放されて、娯楽になるのかもしれません。吉田さんは、自分でパッケージのイラストも描いたオリジナル駅弁、思い出の絵本『ひとまねこざる』に登場する「うどん」、肉まんの「中身」など、そのときどきで思いついたものを自由に作ります。〈何も今作る必要はない〉料理だからこそ、逃げ場になるのでしょう。

 逃避しながらも、探究心に満ちあふれているところが本書の魅力。ちくわの穴の大きさの変化を検証し、袋ラーメンを食べ比べ、焼きおにぎりを握らないでグラタン皿で焼き……。これまで料理本を読んで蓄積してきた知識と、クリエイターならではの遊び心が、予想外の味を生みだすのです。

 連載の途中で結婚し、赤ん坊が生まれて、生活スタイルが変わってからの文章も味わい深いものがあります。同業者である妻と協力して育児をしなければならなくなったため、仕事場を自宅に移した吉田さん。家の台所は妻の聖域で、逃避めしを作る機会もだんだん減っていきます。最後は蕎麦でしめるところが、お酒が好きな人らしい。さらっと語られる我が子へのメッセージもやさしく、「男の料理」のイメージが変わります。

 『逃避めし』を読むと、著者の故郷である岩手の食べ物にも心惹かれるのですが、沖縄料理がむしょうに食べたくなる小説が、池上永一の『トロイメライ』。幕末の琉球王朝を舞台にした捕物帳です。そのままだとアクが強くて食べられないけれど、丁寧に下処理すると美味しくなるアダンの芽など、珍しい食材がたくさん出てきます。

 食文化と教育の関係について興味がある読者は、村林新吾の『高校生レストラン、行列の理由。』をどうぞ。三重県に実在するレストランの本です。調理師を目指す高校生が、地元の食材を使って店を運営する。しかも、コスト管理や接客も自分たちで行うという、画期的な試みで注目されています。

今月の新刊案内
仕事について考えてみる秋
「子どもには世界を視野に入れて夢を追ってほしい」と考えているお父さんお母さんに、ぜひ読んでいただきた...>>続きを読む
今月の新刊案内
深まる秋を彩る秀逸な物語たち
児童文学のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した上橋菜穂子さん。大人も夢中にさせる...>>続きを読む
サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。