歩行を再現する装置で軟骨の細胞を効率的に培養

 宮田昌悟先生は、再生医療工学と呼ばれる分野の研究をしています。

「患者の検査や手術に、電子機器が不可欠となったように、医療と工学は、切り離すことのできない研究領域。私は主に、細胞そのものを高機能のキカイと考え、細胞を工学的に扱うことで、医療に貢献する方法を探っています」

 具体的には、ヒトや牛などの細胞を培養し、骨や軟骨、靱帯、血管などを作っているとか。宮田先生に、研究の一例を挙げていただきました。

 「無重力の宇宙に、長期間滞在する宇宙飛行士は、意図的に運動しないと、骨がスカスカになってしまいます。その原因は、軟骨の細胞とは、重力や歩行の振動で圧縮されており、その圧を細胞自体が感じることで、硬くなる性質があるからなのです。そこで私の研究室では、動物の歩行と同様の圧力を加えられる装置を作り、効率的に軟骨の細胞を培養する研究をしています」

 装置を作るために必要なのが、工学(ものづくり)のスキルです。

 「まず、動物の歩行のメカニズムや加わる力を、物理的に計算し、それを機械装置で再現します。最先端の研究領域なので、専用の実験装置を作る企業などはありません。ですから、あり合わせの機械を組み合わせた装置を製作するしかないのです。できた装置を改良することも重要で、"ここをもうちょっと削れば、もっと動物の歩行の刺激に近くなる"などと推測して装置を加工し、研究の成果を高めていきます」

 装置は、研究所に隣接している工場で、金属を加工する旋盤などを用いて加工します。

 「装置の製作は、学生自身で行います。作業着姿で、油にまみれながら装置を作り、その後はすぐに白衣に着替えて、細胞を培養する実験をします。研究室に入ったばかりの工学部の学生は、生物分野の研究領域である細胞に触れた経験などはありませんから、1か月間みっちりと"細胞培養特訓"をします。先輩が後輩について、細胞を培養するシャーレ(容器)のフタの開け方から細かく指導をしています」

プレゼンテーション能力も研究と同様に重視する

 学生の中には、「関節の病気で苦しむ自分の祖父・祖母のために、人工関節を作りたい」という理由で、研究室に入る人もいるそうです。

 「体育会に所属していて、ケガで半月板を除去してしまった学生もいます。彼は、将来、自分が歳をとったときに、歩行困難にならないように、研究したいと話しています」

 研究室では、月に1度ほど、学会さながらの緊張感ある雰囲気を作り、学生が発表する機会を設けています。 

 「その様子は、ビデオに録画して、学生に見せます。すると、いかに自分の声が小さいか、わかりにくい話し方をしているかに気づくのです。私は、こうした教育も重視します。いい研究をしても、その成果の見せ方に工夫がないと、世に広まっていきませんから」 

慶應義塾大学
理工学部機械工学科
宮田昌悟研究室
宮田昌悟先生

東京大学修士課程工学系研究科機械工学専攻修了
  九州工業大学助教、北九州市立大学非常勤講師などを経て、
2008年より現職。
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