中学受験では、「算数が合否の鍵を握る」と言われています。
ただ、多くの子どもは、「苦手単元」を持っています。
本特集では、子どもが頭を悩ませる「苦手単元」を学力別に紹介し、徹底的に解説していきます。
取材・文/國天俊治、岡本晃 撮影/東京フォト工芸(清水真帆呂)、藤井修(スタジオルーツ) イラスト/タカセマサヒロ
※本特集の単元の分け方は、四谷大塚の学習カリキュラムを参考にしています



算数の学力をアップさせるためには、苦手とする単元の問題を、解けるようになることが大切です。四谷大塚の算数の講師3人に、多くの子どもが苦手とする単元と、その克服方法について聞きました。
お話をお聞きした先生:四谷大塚巣鴨校舎専任講師 辻庸光先生、高田馬場校舎専任講師 井上幸治先生、お茶の水校舎専任講師 宮下浩一先生

算数は「受験資格」苦手克服が合否を握る

中学受験の合否を左右するとも言われる教科──算数。

小6の夏以降の学習でも、学力アップの鍵を握る教科であることは間違いないでしょう。四谷大塚の先生たちも、口々に算数の重要性を話します。

「算数は、中学受験において、言うなれば『受験資格』となるような科目だと思います。解けない問題が多いと、志望校への合格はなかなか望めません。また、真剣に学習している子どもと、そうでない子どもの差が、大きく表れます」(宮下先生)

「算数のテストは、一問の配点が大きいですから、算数を落とすと、テスト全体の出来に関わってくるでしょう」(井上先生) 

算数の学習では、学力アップに時間がかかります。さらに、「できた」「できない」がはっきりとわかるので、子どもが挫折感を味わいやすいようです。現在は、「算数離れ」の風潮があると言われており、算数に苦手意識を持つ子どもが増えています。その背景には、自分から主体的に学習することを苦手とする子どもが、多くなっていることがあるようです。

「進学塾では、小5の前半以降、それまで学んだ知識を使って、自分の力で解き方を考える学習が、メインとなります。つまり、自主的に問題へ取り組む姿勢が問われるわけです。親のアドバイスを素直に聞いて、基本知識を覚えるだけでも点が取れていたのが、自分で考える学習に切り替わることで、得点が急にダウンしたりします。小5の後半は、算数嫌いの子どもが、最も増えやすい時期と言えますね」(辻先生)

「算数の学習の大きな特徴は、ただ『わかる』だけでは、学力アップにつながりにくいことです。『公式を覚えた』『理論はわかった』というところから一歩進んで、問題を『解ける』レベルにまで、到達しなくてはいけません。そして、この『わかる』から『解ける』に至るまでの道のりが長く、ここはもう、問題練習を繰り返すことでしか、乗り越えられないでしょう」(宮下先生)

得意・不得意を把握し 弱点克服に努める

算数の学習では、幅広い内容を学ぶため、単元としての得意・不得意も、子どもによってさまざまです。

「ただ、算数は、テストの結果で、解けた問題と解けなかった問題が、ひと目でわかります。そういう意味では、弱点が、比較的わかりやすい教科と言えるかもしれません」(宮下先生) 

多くの子どもが苦手とする単元も、いくつか存在します。四谷大塚の算数の先生に、苦手単元についてアンケートを取り、その回答をまとめたところ、偏差値65前後の上位生と、偏差値前後の中位生の苦手単元として、それぞれ3つの単元が選ばれました。 まず、上位生では、複雑な場合の数や規則性が問われる「条件整理」を挙げる先生が目立ちました。さらに、図形の切断や展開図を考える「立体図形」、旅人算と比などを複合的に扱う「速さ」などが、多くの子どもを悩ませる苦手単元として挙げられました。 

一方、中位生の苦手単元としては、素因数分解や約数・倍数などを利用する「数の性質」、図形の相似や図形の移動などを扱う「平面図形」、旅人算、流水算、通過算といった基礎的な「速さ」の単元などで、つまずいている子どもが、多く見られるようです。  

これらの苦手単元を克服させるために、まずは子どもが苦手とする理由と、単元ごとの対策を解説していきます。

上位生の苦手克服には 手を動かすことが必須

まずは、多くの上位生が苦手とする上位生の苦手克服には手を動かすことが必須「条件整理」を解説していきます。この単元では、複雑な場合分けをする問題に、つまずくケースが目立つようです。

「複雑な条件を整理し、場合分けして考えるような問題では、整理の仕方にさまざまなパターンがあります。さらに、問題によって出される表や図も異なりますから、どの知識を使えば解けるのかを考える段階で、迷うようです」(宮下先生) 

「長い文章題が多いことも、大きなネックです。多くの子どもに当てはまることなのですが、最近の子どもは、長い文章を正確に読むことを苦手とします。ですので、問題文が5行を超えるくらいの長さになると、途端に読めない子どもが増えたりします。書いてある内容が理解できれば解ける問題でも、問題文の内容自体が把握できないため、正解を導き出せないのです」(辻先生) 

文章題では、算数の力に加えて、読解力も問われるため、普段の学習から習慣づけておきたいことがあります。

「『条件整理』は、算数全体の力が問われる単元なので、対策も全般的なものになります。前提として、まずは基本知識を完璧に理解しておくこと。その上で、問題を読みながら、手を動かして図形や表を描くという作業を、習慣づける必要があります。問題文が長くなるほど、書いて条件を整理する力が有効になるでしょう」(井上先生) 

上位生の2つ目の苦手単元「立体図形」は、その難易度のせいか、それほど多くの中学校では出題されません。ただし、男子の上位校などでは、出題されることが多く、合否を分ける単元のひとつと言えます。

「立体図形が苦手な子の場合、問題と同じ立体図形を書き写すだけでも、ひと苦労。子どもによっては、私たちが黒板に書く立体図形を、ただ眺めていたりします」(宮下先生)

「立体図形」への苦手意識を克服するときも、手を動かすことが必須のようです。「とにかく、見取図と展開図をたくさん書かせること。その経験を積み重ねれば、少しずつ切断面などをイメージできるようになるでしょう。図形を書かせるときは、できるだけ大きなサイズで、丁寧に書かせるようにしましょう。それにより、平行や直角などの部分が、感覚的に理解できます」(辻先生) 

上位生の3つ目の苦手単元「速さ」では、旅人算と比などを複合的に扱う問題が、上位生のつまずきやすいところ。

「問題文が長くなるほど難しく、問題を見ただけで、『苦手だ』『投げ出したい』と思ってしまう子どもが多くいます。そして、問題をよく読まず、目先の数字だけで解こうとする傾向が見られます。しかしこの単元は、学校ごとの難易度の差はあれど、かなりの確率で出題されますから、しっかりと練習を重ねるべきでしょう」(辻先生)

「まずは、問題を整理して、状況図などを描く習慣をつけさせましょう。そうすることで、何を聞かれているのか、どうやったら正解に近づけるのかが、視覚的に理解できます」(宮下先生)

中位生は各単元の基本知識がおろそか

 一方、中位生が「数の性質」や「平面図形」、「速さ」などの単元を苦手とする理由としては、基本知識が不足していることが、指摘できます。
「『数の性質』については、とにかく知識不足です。公式や定義をしっかり覚えていないから解けない。苦手な理由は、これに尽きると思います」(辻先生) 

知識不足を補うには、やはりコツコツと学習するしかありません。

「まずは、この単元で、知らない公式や知識がないかを総復習し、チェックさせる必要があります。特に、植木算などは、内容をしっかり理解できていない子どもが多いので、復習を徹底させましょう」(井上先生) 

基本知識にヌケやモレがある点は、「平面図形」や「速さ」の単元についても当てはまります。
「そもそも中位生の場合、図形の勉強をあまりしていない子が、多いように感じます。『図形はできないからやりたくない』と逃げの姿勢で、すぐに解答を見てしまう。それで、解き方を理解した気になっていては、いつまで経っても苦手克服にはつながりません」(井上先生)

「中位校で出題される問題の中には、単純な図形問題を組み合わせたものが多いですから、『平面図形』の理解度が、合否を分けるポイントになってくる場合もあるでしょう」(辻先生)

「平面図形」に取り組むときは、問題に書かれている辺の長さや比などを、図形に書き込ませることがポイント。

「その上で、逃げずに問題練習を積んでいけば、相似などが次第に『見える』ようになります」(宮下先生) 

3つ目の苦手単元「速さ」では、旅人算の基本的な問題で、つまずく子どもが多いようです。
「流水算、通過算では、基礎的な知識が足りない傾向が見られます。その土台がない状態で、志望校の過去問にチャレンジさせても、なかなか効率的には進まないでしょう」(井上先生)







自発的な取り組みが苦手克服の鍵となる

算数の苦手単元を克服させるには、問題練習を繰り返し行うことが、肝心です。そのため、塾での勉強に加えて、家庭学習でのがんばりも欠かすことができません。そして、家庭学習をサポートするときに、大前提として親が意識しておきたいのは、「算数の学習では、時間や問題量を『こなす』だけでは学力アップにつながりにくい」という点です。

「問題内容を深く考えず、すぐに答えを見るような学習方法では、どんなに時間をかけても、苦手単元は克服できません。親は、一問一問をしっかり考えさせるように導くべきですね。そのためには、自分から問題に取り組む意欲を、引き出すように心がけましょう。簡単な問題でも解けたら褒める、ヒントを与えるときは小出しにして、自分で解けたように感じさせるなどの工夫をして、意識的に自発性を伸ばしてみましょう」(宮下先生)

「あまり難しい問題にチャレンジさせないことも、心がけてほしいところです。特に中位生なら、10分考えても手がまったく動かない問題なら、一度止めさせて、解き方を教えるのも、ひとつの方法だと思います。ただし、その場合、翌日に同じ問題を白紙の状態から解き直させるようにしましょう。昨日できなかった問題ができることで、達成感が得られ、モチベーションアップにつながります。もし解き方を忘れていても、叱らずに根気よくサポートしてください。楽しんで勉強させる意識を、親が持つことが大切です」(井上先生)

幅広い算数の学習で、子どもの苦手単元がどこなのかを、親がすべて把握するのは、なかなか難しいもの。そんなときには、塾の先生に早めに相談しましょう。

「塾の先生のところへ相談に行けば、不得意な部分を、より具体的に教えてもらえるはずです。そして、その単元を重点的に復習させることで、学習の効率がアップします」(辻先生) 

苦手単元に取り組む学習では、子どもが挫折感を感じてしまう場面も多くあります。親としては、その挫折感をできるだけ取り除き、積極的に考える姿勢をつくることが、最高のサポートと言えそうです。

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