第16回
記憶力って鍛えられる?
  

脳の仕組みを知ることが記憶力アップの第一歩

世の中には、一度会った人の顔と名前をすべて覚えていたり、数万桁の円周率を暗記していたりする“記憶の達人”が存在します。ここまでの達人になれるかどうかはさておき、脳には、それだけのものを暗記するポテンシャルが、あらかじめ備わっているということについて考えてみましょう。

受験勉強をしていると、覚えなければいけないことはたくさんありますから、記憶力が高い方が得なのは、言うまでもありませんね。もちろん、その先の人生でも、記憶力が高いことで得られるメリットは、多分にあります。その記憶力を、なんとか鍛えられないものかなと思ったことがある人もいるのではないでしょうか?

実は、その方法があるんです。

記憶力というのは、一つひとつの情報を、しっかり記憶していく力のことです。記憶の仕組みを知り、脳の本能に合わせた方法を取れば、物覚えがよくなり、記憶力をアップさせることが可能です。

ここで、記憶の仕組みについて考えてみます。記憶が生まれるためには、脳が受け取った情報を理解し、思考するプロセスが必要です。具体的には、脳が情報を受け取ったときに、脳内のA10神経群という部分で「これは好きだ」「楽しい」というようなプラスのレッテルを張り、さらに自己報酬神経群という神経も機能するような状態になって、はじめてしっかりした記憶が生まれるのです。脳の機能から、記憶を長続きさせる条件を整理すると「興味を持ち、好きになり、自らやると決め、無理だと感じたり大変だと考えたりせず、しっかりと内容を理解する」という条件が浮かんできます。これは記憶力を高める上で、前提となるものの考え方です。

とは言え、常に自発的に勉強するような子どもはさほど多くないでしょう。自己報酬神経群の力を発揮させてあげるためには、親の工夫が必要です。

体験記憶を上手く取り入れ学習効率を上げる

人間の脳の記憶には、4つの種類があります。1つめは「作業記憶」で、これは誰もがすぐ忘れていく記憶であり、たとえば「今日の朝ご飯はパンだった」というような、脳にとってあまり重要ではないと判断される記憶です。作業記憶はおおむね4日で脳から消えていきます。2つめは、勉強などでものを覚える場合の「学習記憶」。3つめは、体の使い方に関わる「運動記憶」。自転車の乗り方を忘れないのは、この記憶の働きです。そして4つめが、エピソードを通じて生まれる記憶。「こうやったら上手く行った」というような体験を記憶し、次の機会に生かそうとすることが「体験記憶」であり、4つの記憶の中でも、もっとも強烈な記憶であると言えます。

この体験記憶こそが、実は記憶力アップにつながるカギ。上手く導入できれば、その都度、記憶が深まり、総じてものをよく覚えている状態となります。体験記憶をいかに勉強に取り入れるかで、学力も変わってくると言えるのです。

では具体的にはどうすればいいかと言えば、その方法は実はシンプル。その日学習した内容を、口に出して復習すればいいのです。学習記憶を口に出すことで“体験”に代えてしまいます。これはアメリカの大学でも取り入れられている、だいたい解ったを認めない学習法です。

実際に“やってみる”ことで記憶力は飛躍的に高まる

もうひとつ、ものを覚える際に有効な方法があります。それは「複数の情報を重ねると記憶が強くなる」という脳の仕組みを利用することです。

たとえば、子どもが生まれて初めてりんごに触れたとします。その時、まず脳の視覚中枢が目でみた情報を受け止め、その後多くの神経群によって「赤い」「少し固い」「香りがする」「おいしそう」というさまざまな認識がなされます。この重なりが多いほど、記憶はより正確になっていきます。触るだけでなく、臭いをかぎ、食べてみるなどすれば、さらにりんごの情報は重なり、記憶ははっきり残ります。

つまり、対象に興味をもち、多角的に接して情報を多く得ることが記憶力を高めるコツだということです。

図形の問題なら図形を紙で作ってから考えたり、理科なら実際に山や海に出かけていって観察したりすることで、記憶はどんどん深くなります。“体験的で楽しい学び”こそ、記憶力を鍛え、ひいては脳を育てる大切な方法だと言えますね。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。 著書に『勝負脳の鍛え方』(講談社)などがある。
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