子どもの発達に及ぼす性差の影響はとても大きいものです。当然、中学受験においても、男女では得意・苦手教科から学習態度、意欲までが異なってきます。性差が生む違いを知って、わが子の効果的なサポート方法を探してみましょう。


もちろん個人差はありますが、男女の心身発達には大きな違いがあります。
生得的な差異を知ることで、わが子に適した伸ばし方が見えてくるはず。
では、その差異とはどのようなものなのでしょうか。専門家にお聞きします。


大脳の発達には生まれつき性差がある

男女の心身発達には、誕生時から歴然とした性差がある──。
発達心理学研究の第一人者である、お茶の水女子大学の内田伸子先生はそう言います。

「子どもの発達における性差の基盤には、生物学的な要因と環境要因の両面があります。特に12歳くらいまでの子どもは、発達段階が男女で大きく異なるものです」 

心身の発達は、脳の機能の成熟と大きく関わっています。右脳は空間認知や音楽など、感性を司る役目を果たし、左脳は言語や計算など、理性を司っていることはよく知られていますが、左右の脳の発達の速度が、男女によって違いがあることは、あまり知られていないのではないでしょうか。

「大脳の成熟度は、生まれたときから男女間ではっきりと差異があります。女の子は左脳が右脳より発達していて、男の子は右脳・左脳とも、女の子の右脳程度の発達に留まっていることが確かめられています」(内田先生) 

では、なぜそのような差が生まれるのでしょうか。

「もともと脳は左脳のほうが優位にできていて、右脳より先に細胞分裂が始まります。ただお母さんのお腹の中で育っていくこの時期に、同時に男の子はテストステロンという男性ホルモンも分泌され、男性性を発現させなくてはいけません。性ホルモンの分泌が盛んになると、成長ホルモンの分泌は抑えられてしまうことがわかっています。その結果、女の子は左脳が発達して生まれますが、男は左右の脳に差がなく、女の子ほど左脳が発達していない状態で生まれてくるのです」(内田先生) 

つまり、男の子は脳の成熟と男性性の形質発現の双方にエネルギーが分散しているため、脳の成熟にエネルギーの全てを注ぐ女の子と比べると、大脳機能の性差が生まれるのです。 そしてその性差は、行動学的な性差に繋がります。個人差はあると言えども、左脳が発達している女の子は左脳が司る「言葉を早く覚える」「手先が器用」といった特徴を示します。反対に、男の子は右脳の「立体を認知する能力」「複雑な図形を認識する力」が、女子より優れている傾向にあります。 また、脳の発達の性差は、心身の発育の差にも表れ、男の子には「体が小さい」「環境ストレスに弱い」「すぐにメソメソ泣く」などの脆弱性(破損傷性)も見られることがあります。

「12歳頃まで、男女の発達には1年くらいの差があります。総じて男の子のほうがナイーブで傷つきやすいのは確か。でも親はつい“丈夫で強い、泣かない男の子”を期待しがちです。“体が大きく、口が達者な女の子”と比べず、小学生のうちはがんばったところを認め、たくさん褒めて自信を持たせるような言動で接してあげてほしいですね」(内田先生)






脳にプログラムされた男の子、女の子の特徴

教育カウンセラーとして子育ての悩みに応える諸富祥彦先生も、子どもの発達の性差は、生まれつきの脳のプログラミングに関係があると言います。

「男の子の脳にはもともと、“落ち着きがない”“反抗したがる”“戦いごっこが好き”といった特徴がプログラミングされています。うちの息子はじっとしていられなくて……、と悩むお母さんも多いと思いますが、それは男の子の特徴のひとつです」(諸富先生)

一方、女の子の脳には「言われたことを素直に吸収する」「地道にコツコツと努力をする」といった特徴がプログラミングされているそうです。

「その特徴が、生活面、学習面に反映され、小学校高学年くらいでは、女の子の方がまじめで学習態度もよいという傾向に表れます」(諸富先生) 

さらに、女の子は「人間関係にとても敏感」であることも特徴です。

「もともと女の子は男の子に比べて、人の表情のような複雑な刺激をじっと見つめる能力が高い、つまり人の顔色をうかがうのが得意なのです。その結果、人間関係にもとても敏感に反応するようになります」(内田先生) 

それは、女の子は友だち付き合いの悩みが多いことからもわかります。

「女の子は小学校高学年にもなると、3,4人の仲よしグループを作りたがるようになり、自分がどこかのグループに所属し続けるためには、自分を抑えてでも周りに合わせようとしがちです。それでストレスを溜めている女の子も少なくありません」(諸富先生)

「女の子はひとりで行動できない」というのも、人間関係に敏感な女の子の特性が要因のひとつとも言えるでしょう。

男の子、女の子の特性に合わせた接し方を

 性差の基盤になる生得的な理由の3つめとして、内田先生は「気質の個人差」を挙げています。「子どもには、物の因果的な成り立ちに興味を持つタイプと、人間関係に大変敏感なタイプがいて、私はそれぞれ“図鑑型”、“物語型”と名づけています。男の子は図鑑型、女の子は物語型が多い傾向にありますね」(内田先生)

物語型の性質の女の子は、「ありがとう」や「きれいね」などと言った感情表現を、より心に響く言葉としてとらえる傾向にあります。一方、図鑑型の男の子は「ものの名前」や「仕組み」に興味を示すことが多いそう。この特性を考慮すると、同じ内容を伝えたいと思っても、違う角度からの言葉がけが有効になりそうです。
  「たとえば、“雨が降っているから自転車で出かけるのをやめさせたい”という場合。少し極端ですが、女の子には“転んでけがでもしたら、お母さん悲しいわ”と感情に訴え、男の子には“雨で地面が濡れると、地面とタイヤとの摩擦抵抗がなくなって自転車が倒れやすくなるから気をつけてね”というように理屈で説明したほうが、子どもの心に入りやすいのです」(内田先生)

ほかに、親がよく男女差を感じる特徴のひとつに、集中力の差もあります。男の子はじっとしているのが苦手ですが、かと言って集中力がないわけではありません。男の子は「その気になると、一気に夢中になるような集中力がある」という性質が見られます。「これは、特に思春期に向かうにしたがって、集中力や意欲を上昇させるドーパミンというホルモンが、女の子よりも多く分泌されるからです。全然勉強していなかったのに、高学年や受験直前になって、突然、猛勉強を始めて志望校に合格するような例は、男の子に多いですね。短期集中の集中力と、生まれつき持っている“一番になりたい”といったプライドとの相乗効果とも言えるでしょう」(諸富先生)

それに比べて、女の子はコンスタントに集中力を持続させることができます。志望校を見据えた中長期的な目標に向かって受験勉強をするなど、コツコツと努力させても、途中であきらめずにがんばれます。 さらに、女の子は人に言われたことを素直に聞く耳を持っているのも特徴で、特に母の期待に応えたいと思う傾向が強く表れます。「実際、勉強がよくできたり、お手伝いをきちんとできたりする“いい子”が女の子に多いのも事実。だからと言って“もっとがんばれ”と過度の期待をかけ過ぎて、プレッシャーになることがないようにするのが大切です」(諸富先生)

男女ともに、子育ての本質は共通です。ただ子どもへの接し方については、男の子、女の子の特性に合わせた「演出」をすることが大事なのです。 男女の特徴を、下記にまとめてありますので、わが子が持つ性質と照らし合わせてみてください。

競争が好きで一番になりたがる
プライドが高く、「一番じゃないと気に入らない」傾向がある。反面、一番になれそうにないと思ったら、すぐにあきらめて投げ出してしまうことも。

空間認知能力が高く立体図形に強い
「立体を動かしたり、平面を折り曲げたりするとどうなるか」などの問題を頭の中で処理できる能力。地図を読むことや、迷わずに目的地に行くことも得意。

12歳頃までは女子より発達が遅め
体の成長が、女子より約1年遅く、小柄で病弱な子が女の子に比べて多い。ただ、発達に個人差があるのも特徴で、背が伸び始めると一気に大きくなる子も。

飽きっぽく興味が長続きしない
興味を持ったことに、一時的にはとても集中するが、その集中力を持続できず、飽きてしまいがち。学習面でも、コツコツ勉強するのが苦手な傾向にある。

「図鑑型」の気質を持つ子が多い
目の前にあるものの、しくみや動き、成り立ちに興味を持つのが「図鑑型」の気質。感情に訴える言葉より、論理的な説明のほうが、心に響きやすい。

じっとしているのが苦手で落ち着きがない
周囲を見回し、考えてから行動するというより、「まずは体を動かす」ほうが好き。好奇心が旺盛で、なんでもやってみないと気がすまないところがある。

こだわりを持つと一心不乱に夢中に
たとえば幼児期に電車や昆虫が大好きで、大人顔負けの知識を持っているような子も多い。こだわりの分野については、自信を伸ばしてあげるのがよい。

傷つきやすく打たれ弱い
「一番が好き」という性質と表裏一体。自分が一番になれないことや、中学に入って「自分が平凡」であると気づくと、とても傷つくことも。

 

左脳の発達により言語能力が高い
「女の子は口が達者」と言われるのもこのため。言葉を聞き取る能力が高く、早い段階からの読み聞かせも有効。耳がよいので男性の大声を怖がることも。

コツコツ続ける集中力がある
ひとつのことをやり始めたら、コンスタントに最後まで続けようとする集中力が、持続するのが女の子。地道な努力によって、段階を踏んで成長する。

「物語型」の気質を持つ子が多い
人間関係や場の空気を読むのに敏感で、あいさつや「おいしいね」「きれいだね」といった感情表現が心に響きやすい。男の子の「図鑑型」と対照的。

人に言われたことを素直に受け入れる
他人に言われたことをよく聞こうとするのは、女の子の脳の特性。人間関係に敏感なので、人の気持ちになって考えようとする姿勢ができている。

真似ることでマスターする
まねること、つまり学ぶことが得意なので、学習習慣をつけたいときも、まずはやり方を示してあげるのが効果的。最初だけでも親が一緒に勉強を見よう。

母の期待に応えたい気持ちが強い
女の子には、お母さんと同じようになりたいという気持ちがあり、母親の影響をかなり強く受ける。表面的には反発しても、母親の言葉を気にしている。

周囲に合わせる協調性が高い
みんなで力を合わせようとする気持ちが強い女の子。ただ、良好な友だち関係を維持するために、自分を押さえてでも周りに合わせようとするところも。

友だちの人間関係にかなり敏感
特に小学校高学年になると、限られた友だちと仲よしグループを作りたがる傾向に。グループ内でうまくやっていくことが死活問題ととらえがちな傾向も。

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