第3回

『どこ行くの、パパ?』

ジャン=ルイ・フルニエ【著】、河野万里子【訳】
11年2月刊/白水社/1,890円


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『おっぱいとトラクター』

マリーナ・レヴィツカ【著】、青木純子【訳】
10年8月刊/集英社/840円


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84歳の父親が、36歳のグラマーな美女と再婚宣言! 2人の娘がそれを阻止すべく奮闘 するドタバタコメディー。世界37か国、合計 200万部を売り上げたヒット作だ。

『重力ピエロ』

伊坂幸太郎【著】
06年7月刊/新潮社/660円


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直木賞候補となり、映画化もされた本作。暗い過去を持つ兄弟の身の回りで起こる、連続放火などの不可解な事件。謎解きを通して明 かされる、家族の真実とは……?


ジャン=ルイ・フルニエの『どこ行くの、パパ?』は、フランスでユーモア作家として有名な著者が、笑うことが難しい私生活を綴った作品です。

本書は、語り手の「僕」が二人の息子、マチューとトマに、本を贈りたかったという話から始まります。でも、一度もプレゼントしなかった。二人はどんなに年齢を重ねても、字を読めるようにならないから。〈障害児のことを話すとき、人は悲惨な事故の話でもするような顔になる。だから僕は一度だけ、笑顔できみたちのことを話したい。〉そういって、「僕」は二人と過ごした日々を回想します。

お気に入りの本について語り合うことから誕生日やクリスマスのお祝いまで、ほかの親子が普通にしていることが、「僕」にとってはかなわぬ夢です。車に乗せると必ず〈どこ行くの、パパ?〉とたずねるトマ。行き先を告げても、ものの一分で忘れてしまい、何度も何度も同じことを訊きます。マチューはくちびるで〈ブルンブルン〉とエンジン音を響かせる。家に帰りついてもやめず、一晩中、〈ブルンブルン〉を続けることもあります。コミュニケーションがほとんど成り立たないから、喧嘩することすらできません。

だからこそ〈僕〉は〈いっしょにいると、退屈しない〉と言い、息子の障害をときにはブラックすぎて引いてしまうくらい、徹底的に笑い飛ばすのです。〈おまえは、自分のこともままならない小さなふたりの子どもを冗談のネタにして、恥ずかしくないのか?〉と自問しながら。〈恥ずかしくない。そんなことで、愛情は減ったりしない〉という回答に胸を衝かれます。

マリーナ・レヴィツカの『おっぱいとトラクター』も、そんなタフなユーモアとぶれない愛情を感じる小説。子どもの何気ないひと言が発端となり、親が拷問されるような過酷な現実を生き抜いてきた家族の物語ですが、変わり者の父親のキャラと再婚相手の美女の言動が可笑しく、軽やかに読めます。

どの国でもどんな時代でも、やりきれない出来事は起こります。直面すると、わたしもどうしたらいいのかわからなくなりますが、心に留めているのが、愛情とユーモアに満ちた言葉が家族を過去の悲しい事件から解き放つ、伊坂幸太郎の『重力ピエロ』の一節です。〈楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる〉。

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