第15回
子どもの脳に悪い親の言動
  

"今やろうと思った"はただの言い訳ではない!?

子どもがもっともやる気がなくなる親の言動を知っていますか?

それは、「先回りで言われる」ということです。ちょうど勉強を始めようとしていた時に、「勉強しなさい」と言われ、「今やろうと思ってたのに!」と言い返す。このようなやりとりが日常茶飯事となっている家庭もあるかもしれません。

親としては、「またそんな言い訳して……」と感じることもあるでしょうが、実はこれは、ただの言い訳ではありません。 「先回りして言われたくない」という反応は、子どもの脳がそれを拒絶しているからです。

小学校高学年は、脳が発達し、脳内の「自己報酬神経群」も活発になってくる時期です。自己報酬神経群は、自分で決めたことを自分で達成したいと考え、「自分でやる」ということに、よろこびやうれしさを感じ、それをご褒美として働きます。

親が「勉強しなさい」「今からこれをやりなさい」と指示することは、子どもにとって「自分でやる」機会を奪われることです。これでは自己報酬神経群は働きづらく、あれこれ指示するほどに、脳のパフォーマンスは落ちていきます。 親が「勉強しなさい」「今からこれをやりなさい」と指示することは、子どもにとって「自分でやる」機会を奪われることです。これでは自己報酬神経群は働きづらく、あれこれ指示するほどに、脳のパフォーマンスは落ちていきます。

とは言え、常に自発的に勉強するような子どもはさほど多くないでしょう。自己報酬神経群の力を発揮させてあげるためには、親の工夫が必要です。

上手な質問を投げかけて子どもに自ら選ばせる

子どもに対し、指示することなく勉強を始めさせる秘訣は、ずばり「よい質問を投げかけること」です。「こうしなさい」ではなく、「あなたはどうすればいいと思う?」と問いかけをして、子ども自身が選んだ形になるように持っていくのです。

たとえば、算数が苦手な子どもに対して「勉強しなければできるようにならない」「わからなければ塾の先生に聞いて」などと指示の形でアドバイスしても、子どもにはなかなか伝わりません。ここで、「お母さんも算数は苦手だったんだ。でもわからないところを先生に聞きに行っていたら、得意になったのよ。あなたはどうしたらいいと思う?」と質問したらどうでしょう。必然的に、子どもは「ちょっと自分で勉強してみる」か「じゃあ塾の先生に聞いてみる」と回答することになります。自分で「こうする」と言わせることが、とても大切です。

質問をする上で、もうひとつ、親が意識したいことがあります。それは、物事に取り組む順番を考えさせることです。

「ゲームと宿題とお風呂、どれを先にやる?」と聞くとします。その際「今から宿題をやると、ぴったり夕食までに終わるね。どれから先にやる?」と少しアドバイスを添えてあげるようにすれば、子どもに「取り組む順番で効率がかわる」という意識が芽生えます。

物事の推移を考えるということには、「思考的空間認知能」という脳の力が関わっています。自己報酬神経群とともにこの力を発達させていくことは、脳にとって好ましいことなのです。

なるほどと思わせる褒め方を工夫する

ここまで、子どものやる気をそぐ言動と、そうしないための方法を考えてきました。では反対に、やる気が上がる言動はなんでしょうか? それはもちろん、褒められたときですよね。

褒められることは子どもの脳にとっての大きな報酬であり、自己報酬神経群が働く原動力のひとつとなります。

ここで褒め方にひと工夫。ポイントは、子どもの自尊心を刺激してあげることです。

子どもが自ら勉強したことで、いい点数が取れたときには、「こんなに上手な勉強の仕方はあなただけしかできない、すごいね!」と褒めちぎります。難しい問題に長時間トライして解法を見つけたときは、「あなたならできると思っていたけれど、やっぱりさすがね! 頭がいいね!」と認めてあげます。

思ってもいない褒め方をされると、子どもは素直に喜び、その喜びに比例して脳も育っていきます。

何より自ら学ぶという、よい習慣を身につけることができ、それが今後の人生において、大いに役立つことは言うまでもありません。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。 著書に『勝負脳の鍛え方』(講談社)などがある。
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