第2回

『雪の練習生』

多和田葉子【著】
11年1月刊/新潮社/1,785円
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『猫にかまけて』

町田康【著】
10年4月刊/講談社/570円
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作家兼ミュージシャンの著者が、猫たちとの日々を写真と文章でつづるエッセイ。それぞれの個性やエピソードが満載で、猫好きでなくとも楽しめる一冊。

『犬たちをおくる日―この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』

今西乃子【著】 09年7月刊/金の星社/1,365円
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動物愛護センターを舞台に、ペットブームの裏側で、捨てられ処分される動物たちの実態に迫るノンフィクション。漢字にふりがなも振ってあるので、子どもにも読ませたい。


<動物が子供を育てるのは本能ではなくアートである。アートだから、育てるのは我が子でなくてもいい。>

多和田葉子の『雪の練習生』からの引用です。たしかに、人間がホッキョクグマを育てるのは、芸術以外の何物でもありません。ベルリン動物園のクヌートは、人間に育てられた実在のホッキョクグマです。真っ白で見るからにふわふわの毛皮、漆黒の瞳。飼育係の男性と遊ぶ動画のかわいらしさに、魅了された人も多いのでは?

本書はクヌートの祖母の話で始まり、その娘トスカとサーカスの女曲芸師の伝説、孫息子クヌートが世界的な人気者になるまでの経緯を描く三代記。第一章「祖母の退化論」を読み出した途端、驚きを覚えるでしょう。ホッキョクグマが「わたし」という一人称で自伝を書くんですから。下手な作家だと、クマの着ぐるみをかぶった人 間が動いているような陳腐な小説になってしまいますが、本書は大丈夫。

クマを単純に擬人化するのでもない、かといってクマになりきるだけでもない、独特の語り口が、クマが人間の言葉をしゃべる不思議な世界にすんなり導いてくれます。何といっても、登場するホッキョクグマの世界のとらえ方がすばらしい。たとえば、「わたし」は〈「寒い」という形容詞は美し い〉と言う。ホッキョクグマにとって、冷たいものは心地いい。当たり前のことですが、それを〈美しい〉と表現するところに惹かれます。動物と人間の相違点の豊かさに着目しているか らこそ出てくる言葉だからです。クヌートは母熊の「育児放棄」によって、人工哺育されたといわれます。しかし第二章「死の接吻」を読めば、動物の行動を人間の物差しで測るのは傲慢なのではないか、とも思うのです。

町田康のエッセイ『猫にかまけて』も、町田訳の猫語にまず爆笑しながら動物とのつき合い方を考えさせられる本。〈人間が勝手に、猫はこう思って いるはずだ、と決めつけるのは不遜だし間違っていることが多いのではないか。〉という一文が心に残ります。

子どもに「動物を飼いたい」とねだられたときの必読書が今西乃子の『犬たちをおくる日』。動物愛護センターで働く人々の日常を取材したノンフィ クションです。子育てというアートに関わっている読者には、きっと響くものがあると信じています。

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