第1回

『こちらあみ子』

今村夏子【著】
11年1月刊/筑摩書房/ 1,470円
Amazonで購入

『いちばんここに似合う人』

ミランダ・ジュライ【著】、岸本佐知子【訳】
10年8月刊/新潮社/ 1,995円
Amazonで購入

孤独によって奇妙な行動や空想に没頭して しまう人達を、切なさとユーモアをもって描 いた16の短編小説。初小説集にしてフラン ク・オコナー国際短編賞を受賞。

『ハーモニー』

伊藤計劃【著】 10年12月刊/早川書房/ 756円
Amazonで購入

21世紀末の「大災禍」と呼ばれる世界的な混 乱を経た人類を舞台にした、ゼロ年代最高と の呼び声も高いSFミステリー。34歳で夭逝 した著者が著す、最後の長編。


親でも、子どもでも、仲間はずれは辛いもの。社会で、家庭で、もし一度でもそういう気持ちになったことがあったら、今村夏子の『こちらあみ子』を読んでみてください。 のけ者にされてしまった人を”かわいそう”にしない目線で描いた小説です。

表題作は、第26回太宰治賞の受賞作。〈父と母、それと不良の兄がひとりいた〉あみ子が、15歳で引っ越し、祖母の家で暮らすようになるまでの経緯を語ります。小学生の頃、母が自宅で開いている書道教室に入れてもらえなかったあみ子。 父も兄も、同級生ののり君も、みんなあみ子と距離をとっています。 彼らは決して意地悪なわけではなく、むしろ優しい人たちです。その優しい人たちから、なぜか、あみ子は遠ざけられている。

あみ子が原因でつけられたらしい車の傷を黙って消す父。 お習字したいというあみ子を〈ボクシングもはだしのゲンもインド人ももうしないって約束できますか?〉とたしなめる母。 友人の目からあみ子を隠す兄。周囲の人の態度、口に出さない言葉から、あみ子がどう見られているのか、少しずつわかっていきます。 一方、あみ子は、自分とみんなの間にどんな隔たりがあるのか理解していません。だから、ある悲しい出来事が起こったときに、とりかえしのつかない言動をとります。その後、あみ子は家族がいるにもかかわらず、完全な孤児になるのです。

タイトルの由来は、父からトランシーバーをプレゼントされたときのエピソード。あみ子は〈こちらあみ子〉と呼びかけますが、誰からも応答はありません。 が、あみ子は決して絶望しないのです。特に、後半の失恋場面では、壮絶なふられ方をするのに。何をされても動じないたくましさが、可笑しいと同時に哀切でもあります。 それだけに、あみ子があある”応答”を得る結末を読んだ瞬間のうれしさといったら! 共感を押しつけることなく、ひとりぼっちの人に寄り添う、素晴らしいデビュー作です。

映画監督でもあるミランダ・ジュライのデビュー短篇集『いちばんここに似合う人』に登場する人たちの淋しさも、あみ子と通じるものがあります。文庫化された伊藤計劃の日本SF大賞受賞作『ハーモニー』もおすすめ。登場人物が言う〈孤独の持久力〉を培う本を、紹介していきたいと思います。

今月の新刊案内
仕事について考えてみる秋
「子どもには世界を視野に入れて夢を追ってほしい」と考えているお父さんお母さんに、ぜひ読んでいただきた...>>続きを読む
今月の新刊案内
深まる秋を彩る秀逸な物語たち
児童文学のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した上橋菜穂子さん。大人も夢中にさせる...>>続きを読む
サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。