都内16校の私立中学校が参加する演劇発表会で、受賞常連校の工学院大学附属中学校演劇部は創作劇を上演し、特別賞を受賞。難しい演技を要求される主役に挑んだのは、中学2年生の上澤夏生さんです。


理解力と責任感が高いハードルを超えさせた

ワイワイと、楽しくにぎやかなおしゃべりと笑い声にあふれる放課後の多目的教室。先生が号令をかけて舞台稽古が始まると、工学院大学附属中学校・高等学校の演劇部員たちの表情は、さっと引き締まります。

始まったのは、創作劇『私のなかで、あなたは嗤わらう』の最も重要なクライマックスシーン。舞台中央で正面を見据える主役。椎名林檎の歌う『本能』が流れる中、それまでひた隠しにしてきた真情を吐露する台詞が静かに、力強く始まります。

「みゆなんて、みゆなんて、本当はいないんです。みゆは、私がつくり出したもうひとりの私なんです」

鏡に映る自分だけに打ち明けた願い。その願いをかなえるために鏡の中の自分が実体化して、次々とまわりの人たちを闇の彼方へ連れ去る。もうひとりの自分が続ける恐ろしい行為を止めようと抗あらがううちに、自らも不条理な世界へと引きずり込まれてしまう――そんな物語の中心となって話の展開を牽引する、「ゆみ」役に挑戦したのが、中学2年生の上澤夏生さんです。

顧問の先生や部員全員と一丸となり、力を合わせてこの作品の練習に取り組んだ結果、昨年7月に開催された「第37回東京私立中学校演劇発表会」において、特別賞を受賞しました。

「上演中、主役は初めから終わりまでずっと舞台の上。私が失敗するとみんなに迷惑がかかりますから、かなり緊張しました。演じるのが難しい役だと感じましたが、台本を読んでみて、この役の感情が台詞から読み取れる気がしたので、思いきって志願したんです」

顧問の先生も「責任感と理解力がある」と評価する夏生さん。入学してすぐに興味のあった演劇部に入部し、演劇発表会や文化祭などでの公演に参加してきました。中高一貫校の工学院大附属では、演劇部の活動を中高生が合同で行っています。「東京都高等学校演劇連盟・多摩北地区合同発表会」では、高校生と肩を並べて夏生さんらも参加し、中高合同による創作劇を上演して、優秀賞を受賞しました。

「入部するまで人前で演技をした経験はなく、最初のうちは恥ずかしいという気持ちが大きかったです。先輩の演じているところを観たり、やさしく指導してもらったりして、少しずつどのようにすればいいのかわかってきました。部活動では、高校生の先輩方ともたくさんお話でき、学校行事などのことについても親切に教えていただけるので、部活の時間が毎日楽しみです」

温かく見守る家族の存在に向上心が育まれていく

部員同士がとても仲のよいという演劇部。私立校ならではの行事として、3泊4日の夏季校外合宿が山梨県の河口湖などで毎年行われ、親睦をいっそう深める機会が設けられています。そのため、部活動で味わう喜びも感動もつらさも、いつも全員で味わえると夏生さんは話します。たとえば、一昨年秋の「東京都高等学校演劇コンクール」。高校生部員が出場予定でしたが、あいにく数名が新型インフルエンザにかかってしまったため、出場を辞退せざるを得ませんでした。もともと出場予定はなかった中学生部員の夏生さんたちも、高校生の先輩と同じように悔しい気持ちを経験したとか。

「だから、その次に中高合同で参加した演劇発表会で、特別賞に選ばれたときは、すごくうれしかったです」

休日にも演劇部のメンバーで集まって遊ぶことも多く、「演劇部に入って本当によかった」と言う夏生さん。ご両親も、充実した中学生活を送るわが子を目にできて満足の様子です。学校でのできごとを楽しそうに語る夏生さんの話に、毎日耳を傾けているお母さんの淳子さんは、こう語ります。

「工学院大学附属中学校は、夏季合宿のほかにスキー教室が毎年あり、中学3年になると夏休みに全員参加で3週間、オーストラリアのアデレードでホームステイをしながら、現地の学校に通う異文化体験研修があります。貴重な体験を、感受性が豊かな時期に経験させてくれる学校にお世話になれて、親としてよかったと感じています」

夏生さんが小さかった頃のことを尋ねると、幼いうちから本が大好きだったと教えてくれました。小学校の頃は図書館に足繁く通い、年間300冊以上の本を読んでいたとか。「私自身が読んで心に残った本は、必ず薦める」という淳子さんの名アシストが、夏生さんをますます本好きにしています。

「それに、もとから正義感の強い子でした。自分がされて嫌だと思うことは決して人にしてはいけないと、何かにつけ言い聞かせてきたからかも」

2人の娘のために、家族写真でアルバムを作り続けている淳子さん。その惜しみない愛情が、夏生さんの人格形成に大きく影響を与えているようです。

お父さんの正邦さんは、自ら事業を営み、わが子に父親としてだけでなく、経営者としての背中も見せてきました。明るく気さくな人柄を思わせる口調で夏生さんのことを話します。

「学校でたくさんいい刺激をもらってくることがわかるくらい、家での話題が豊かになりましたね。演劇のこともよく口にするし。周りのよい環境のおかげだと、感謝してますよ」

自分のことを話すお父さんの隣で、「私の声が大きいのは父譲り。演劇部での活動にはとても役立っています」と、今度は夏生さんが正邦さんのことを語り出しました。小学5年生で塾に通い始める前は夏生さんに熱心に算数を教えていたという正邦さんの、深い愛情も伝わってきます。

夏生さんに影響を与えているのはご両親だけではありません。ご両親の兄弟であるおじさんやおばさんたちも、毎回ご両親と一緒に応援団として公演を観に来ています。

「演劇部のみんなからは、上澤一族と呼ばれています(笑)。うちは親戚の仲がよいのですが、英語を話せる人が多いので、その影響で自然と英語に興味を持ちました」

夏生さんは中学2年で英検準2級に合格。また英語が好きになったのは、演劇部のおかげでもあるのだとか。

「演技をするようになってからプロの俳優さんに興味がわき、映画を観るのが好きになりました。『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、映画館で5、6回観ました。それで英語が好きになり、もっと勉強しようと思ったんです」

夏生さんは「高校生になっても演劇部は絶対に続ける」と決めています。

大勢のまわりの人たちから、これからもさまざまなことを学び、吸収していくであろう夏生さん。高校生になって舞台に立ったとき、その成長を表現に託して、観客席から温かく見守る家族に披露してほしいものです。

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