12月号 特集

取材・文/二本木昭、堀雅俊 写真/アーク・フォト・ワークス(清水亮一、渡邊裕未)、東京フォト工芸(桑原克典、松谷祐増)  イラスト/岸潤一

技術や文化、人など、さまざまなものが国境を越えて行き来する時代です。子どもたちが社会に羽ばたく頃には、より一層グローバル化が進んでいるでしょう。今回の特集では、世界を舞台に活躍する日本人にインタビュー。世界で働くことの楽しさ、苦労、やりがいを語っていただきました。子どもの将来のヒントとなるメッセージが満載です!

界を知らない若者の海外離れ

2010年代に入り、ますますグローバル化が進む現代。「お父さんの上司は外国人」「将来のために、子どもに英会話を習わせている」というご家庭も多いのではないでしょうか。
 しかし昨今、日本の若者の海外離れが指摘されるようになりました。特に顕著なのは、留学生の減少です。たとえばアメリカの日本人留学生は、01.02年には4万5960人でしたが、08.09年では2万9264人(※1)。たった7年間で約40%も減少しました。

また、今年新入社員に行った海外志向に関する調査でも、その傾向が見られます。「海外で働きたいと思うか」という問いに対して、約半数の49%が「思わない」と回答。「海外勤務はリスクが高い」「自分の能力に自信がない」などの理由から、海外勤務を敬遠しているようです(※2)。

このグローバル社会の中で、将来日本を背負って立つリーダーになるためには、世界を知ることはとても重要。これからのリーダーに求められるのは、世界各国の人々とわたり合える語学力を持ち、世界情勢に敏感で、外国人のものの考え方を理解している……、そんな能力なのではないでしょうか。

お父さん・お母さんも、今回の特集を通して、世界のこと、そして世界で働く日本人のことを、ぜひ子どもに教えてあげてください。「いつの日か世界を舞台に活躍したい」と、夢を抱くきっかけになるかもしれません。

乏しい医療設備の中で臨機応変に対応
途上国の人々を救う

ナイジェリアってどんな国?

人口:1億5,187万人
(2009年推定、IMF)
面積:909,890km6amp2;
首都:アブジャ
在留邦人数:124人
(2010年調べ)
日系企業数:14社
(2009年5月調べ)

ギニア湾の最奥に位置するナイジェリア。南部のニジェール川デルタでは、豊富な石油が産出され、アフリカNo.1の産油国である。近年までは、石油や天然ガスの歳入で経済発展をしようとしていたが、今後は製造部門に力を入れていく方針。また同様に、観光もアピールしており、海外投資家の注目を集めている。

ナイジェリアで感じた日本の医療との差

「中学生の頃から、医師になって海外で貧しい人たちを救いたい、と漠然と思っていました。その夢をかなえるべく、医学部を卒業、14年間日本で勤務医として働きながら、5年間英会話のスクールに通うなど、国境なき医師団(MSF)に参加する準備をしました」  

国境なき医師団は、非営利で国際的な民間の医療・人道援助団体。貧困や戦災などで危機に瀕した人々への緊急医療援助を主な目的に、あらゆる国や民族、宗教に対し中立の立場で、世界64か国において医師・看護婦をはじめとするスタッフが援助活動を行っており、1999年には団体としてノーベル賞を受賞しました。その日本支部でナイジェリアで感じた日本の医療との差活躍しているのが医師の日並淳介さんです。

「今年から参加して、4月からナイジェリアに1か月間、8月からパキスタンに1か月間滞在し、外科医として働きました。ナイジェリアでは、現地のコンクリート3階建て、80床ほどの規模の病院で、救急外来を担当。こちらでは、日常のケンカなどで、銃や刃物で負傷した患者が運ばれてきます。交通事故の患者も診ました。パキスタンでは、緊急外来に加えて、外科手術の技術指導なども行いました」  

ナイジェリアでは、骨折が人の死に直結する現実を目の当たりにしました。「国の医療制度の不備や医師不足などもあり、適切な医療を受けられるのはお金持ちだけ。日本では簡単に受けられる骨折の手術であっても、です。実際私も、医師の数が足りないため、夜中の1時に電話で呼び出されて、朝4時近くまで骨折の手術を行うことがよくありました。重い骨折は放っておくと、患部がブラブラしたまま治ってしまい力をかけることができなくなります。すると、肉体労働を生業とする貧しい患者は、仕事を失ってホームレスになり、死を待つしかない状況に追い込まれるのです」  

医療の現場においても、日本との違いは歴然だったと言います。「そもそも、日本で銃によるケガは2例しか診たことがなかったんです。また、日本では当たり前にある胆管の代用となる医療用品がなかったのは驚きでした。なければ、ないなりに“こことここを縫合すれば大丈夫”と臨機応変に対応しました。患者数も多いので、日本の教科書通りの完全な処置は望むべくもなく、人間の身体のしくみについて自分の頭でしっかりと考え、“最低限これだけやっておけば、あとは人体の自然の治癒力で治るはず”という感覚で仕事をする必要がありました」  

目の前の人を救える海外で得た達成感

国境なき医師団は、治安の調査やスタッフの安全の確保に専門の職員がおり、医師が治療に専念できる環境がかなり整えられています。それでも危険と隣り合わせになることもありました。  

「パキスタンでは、宿舎の隣の国連施設が武装勢力による爆破事件にあいました。このときは、20人近くの爆発の犠牲者が病院に運ばれ、私も修羅場の中で治療にあたりました。結局、2人の方が亡くなりました」

将来、地震の被災地や戦地など、さらに注意が必要となる地に赴く可能性もあるという日並さん。

「いろいろ困難はありますが、やはり外国で働く日々は充実していますよ。日本では、重い病気で苦しみにあえぐ高齢者をなんとか延命させる類の仕事がほとんどで、“自分は患者の苦痛を長引かせているだけなのでは?”などと思い、閉塞感を感じることも多かった。しかし外国では、目の前で苦しんでいる子どもや若い人を救うことができます。達成感がありますね」

ともに働く、国境なき医師団の外国人医師にも触発されたとのこと。

「初対面なのに満面の笑顔で〝How Are You!.と抱きついてきたり、移動の車の中で常に歌を歌っていたり。彼らの国籍はフランスやアイルランド、イラク、オーストラリア、ベルギー、タイなどでしたが、オープンな心でありのままの自分を見せるのに抵抗のない人ばかりでした」

 自分の個性や内面を無防備にさらけ出す人に対し、構えてしまう日本人。

「もちろん文化の違いもあるので、一概にどちらが良い・悪いは言えないのですが、こうした日本での人づき合いにも、閉塞感というか息苦しさを感じていた私にとって、明るい外国人スタッフの存在はとても新鮮でした。皆さんも、勉強や学校での人間関係、日々の生活に行き詰まりを感じたら、留学など、思い切って海外に出てみるのもいいのではないでしょうか」

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