関数のグラフを使って絵を描く関数グラフアートの全国コンテストで、中学生ながら最優秀賞を獲得した河村進太郎くん。上の名前も、進太郎くん作の関数グラフアートです。


高度な作品と堂々たる発表が最優秀賞受賞の決め手に

「関数グラフの線を使って、絵を描いてみたらどうだろう」そんな遊び心に満ちた思いつきから生まれた関数グラフアート。関数グラフが表示できる電卓の液晶画面をキャンバス代わりにして、高等専門学校で始められたものです。現在では、関数グラフアート作品の制作技術や芸術性を競い合う全国コンテストが毎年開催されています。

今年の3月12日に開かれた第6回大会で、最優秀賞を受賞した3作品のうち、PC部門で最優秀作品となったのは中学生が制作したもの。1000名を超える応募にもかかわらず、高校生、大学生など大勢の年長者を抑えて最高の栄誉を手にしたのは、海陽中等教育学校3年生の河村進太郎君でした。

コンテストの最終審査は、応募者による作品のプレゼンテーション形式で行われます。学校のある愛知県から東京に設けられた会場へ新幹線で駆けつけた進太郎君は、堂々としたプレゼンを披露。審査員の合議を経て審査結果が告げられると、大会委員長を務める京都大学名誉教授の一松信さんから、進太郎君に賞状が贈られました。

「審査結果の発表で自分の名前が呼ばれた瞬間は、『やった!』と叫びたい気持ちと言うより、肩の荷が下りてホッとした感じでした。授賞式あたりから、だんだんうれしさが込み上げてきて、受賞の実感がわきました」

進太郎君がそう言ったのには、理由がありました。実は今回が2度目のコンテスト参加で、佳作受賞の前回よりさらに手応えのある成果が得られるようにと時間をかけて、作品制作に取り組んできたからなのです。

進太郎君の通う海陽学園は、全寮制による中高一貫教育の私立校。「次代のリーダーを全寮制の中等教育によって育てる」という目標を掲げ、その一環として、生徒の興味を育て自主性を引き出す、課外授業が盛んに行われています。進太郎君が関数グラフアートコンテストに挑戦したのも、その課外授業での体験がきっかけでした。

「数学の特別課外授業で関数グラフアートのことを知りました。初めの頃は、身のまわりの人や、歴史上の人物の名前を関数グラフを使って書いていたんです。それで、先生に勧められて『織田信長』と書いた作品をコンテストに応募し、佳作を受賞しました。けれど、高度な絵を描いているほかの受賞作品を見たら、自分ももっとすごい作品を作ってみたいと思ったんです」

挫けそうになりながらも最後まで意志を貫いた4か月

そこから、進太郎君の再チャレンジがスタートしました。寮で過ごす時間の中から毎日1時間を作品制作に当て、4か月を費やして完成させたのが、最優秀賞を獲得した『グラフの安土城』。最初の応募作『織田信長』にちなんで、信長が築城した安土城を題材に選んだのだとか。

そもそも「なぜ関数グラフで絵が描けるのか?」と思う人もいるでしょう。1次関数y=ax+bのグラフは直線で成り立っています。2次関数なら放物線を描く曲線。いずれも数式次第でさまざまな傾きや曲がり具合をもった線を表現できます。さらに座標上の定義域を設定すれば、始点と終点がある線ができます。長さと傾きの異なる線分を座標上に組み合わせていくことで、絵が描けるというわけです。

進太郎君はまず、現存しない安土城の復元模型を撮った写真を丁寧に紙に写す作業を行いました。硬質な直線だけで表現するグラフアートにしようと考え、絵の輪郭を独立した直線に分けていくと1300本近い量でした。

「写真を紙に写しとる作業だけで1か月もかかってしまいました。作品を完成させるのは、無理なのではないかという気持ちになりました」

それでも、前回よりも納得のいく作品を描きたいと始めたときの決意を思い起こし、制作を続けました。完成した絵に座標を書き加え、それぞれの線分を数式化。パソコンに数式を次々と入力してグラフで絵を再現しました。「文字だけの作品より複雑で作業量も予想以上に増えたので大変でしたが、100本ほどの線をパソコン上に再現したあたりで、コツコツやれば何とかなると思えてきました」

複雑なグラフアート作品を制作したことで進太郎君が得たものは、賞だけではありません。数学という学問への更なる興味と学習意欲です。

「大量の線を1本ずつ数式化していくと、とても時間がかかります。そこで、基本となる数式をいくつか作っておき、それを応用して使うことで一から作る手間を省きました。数学は、答えはひとつでも、そこへたどり着く方法がいろいろあるところがおもしろいんです。工夫次第で、すごく効率的な解き方を見つけられる。今回の作品制作で、改めてそのことに気づきました」

進太郎君が数学に関心を抱くようになったのは、小学生のときに参加した算数オリンピックがきっかけ。小学生以下の子どもが算数の問題を解いて能力を競い合うコンテストで、決勝大会へ進みました。ところが、難問ぞろいの決勝大会では100点満点で3点しか取れず、悔しい思いを経験しました。

「もっと学んで難しい問題も解きたい」という思いを汲み取ったご両親が、海陽学園創設の話を聞き、進太郎君の受験が決まったのだそうです。

塾の講師をしているお母さんの京子さんは、わが子が小さいうちから、さまざまなことに興味を持つよう努めてきました。「一緒にパズル遊びをして、図形に慣れ親しませたり、夕日が見えたら『どうして空は赤くなると思う?』と尋ねたり。生活のあらゆる場面で、知ることへの興味を喚起するよう心がけました。それでも、私自身が教えられることは子どもの成長とともに限られてきました。それで、5年生のときに本人のための環境を家族で真剣に話し合いました」

お父さんの徹さんは、進太郎君の受験シーズンの思い出を語ります。「思うように勉強がはかどらずにあきらめようと弱気になっていた時期もありました。が、そういうときこそ、親が手取り足取りをやり過ぎてもいけないと思います。自主性を伸ばすよう見守ることに努めました」

寮生活から帰ってくるたびにご両親は、高校生となった息子の精神的な成長を実感するのだとか。将来は「経営者となってリーダーシップを発揮したい」と言う進太郎君。数学への関心は尽きることがないようです。「今は『コラッツの予想』と呼ばれる数列の未解決問題に挑戦しています。誰にも解けないとされる難問ですが、だからこそ取り組み甲斐があって、とても楽しいです」

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